アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム


すべてのクライアントは神田うのである

アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。


第27回 <すべてのクライアントは神田うのである>

先日、5年間担当してきたクライアントを外れることになりました。競合コンペが当たり前の昨今、営業でもない限り5年もひとつのクライアントと付き合うことは珍しいと思います。ボク自身、入社以来の最長記録です。それだけ長く担当すればいくらなんでも少しは成長しただろうということで、この5年で学んだことを忘れないうちに書いておこうと思います。


学んだこと1. 人は自分の聞きたいことしか聞かない

セレブ

いきなりヤな話ですみません。でも、つくづくそう思ったんです。調査データ、商品の長所、市場の動向、消費者の好みや生活パターンなどの客観的事実を元に100%誠心誠意こちらがどれほど心を尽くして説明しても、人は見たくないものは見ないし、聞きたくない話は聞きません。今どきそんなの誰も着ませんよと何度忠告しても、肩パッドの入ったパステルカラーのダブルのスーツをつい注文してしまうバブル紳士みたいなもんです。当然マーケティング担当者のモチベーションは下がりっぱなし。結局、5年で4人も担当が変わりました。新年度のたびに新担当になりますねぇ、とイヤミを言われたほどです。

結局、どんなに正しくてもイヤなものはイヤなんです。人は理屈で説得できても、納得まではさせられない。頭ではわかってても、心がうんと言わないかぎり動かない。A社とB社の冷蔵庫を比べたとき、A社の方が明らかにスペックでは優れてるのに、イメージのいいB社を選んでしまうことってありますよね?人は自分で思うほど理性的かつ合理的な生き物じゃない。もっともっと直感で生きている。極めて個人的なイメージで恐縮ですが、なんとなーく神田うのってそういう人の代表選手な気がします。TVで見たイメージだけで言ってるのでホントに超なんとなーくですけど。でも、別に悪い意味じゃないんです。誰が何と言おうと関係ない、我が道を行く。自分の頭より心に正直、という意味で実に人間らしい。以前はボクもそういう人が大の苦手でしたが、今ではもう「人は皆、生まれながらにしてセレブである」と思うようにしています。


学んだこと2. プレゼンは戦略から入るべからず

プレゼン

セレブは楽しいことが大好きです。小難しい理屈やしちめんどくさいデータなんて読んでる時間はありません。そんなヒマがあったら一秒でも早く面白おかしく暮らしたい。しかし通常、広告のプレゼンは「戦略 → 具体案」の順に行います。商品が市場で目指すべきポジションやイメージを調査などの各種データに基づいて説明した後、CMやキャッチコピーを提案する。でも考えてみればそれっておかしいんです。その案がなぜ正しいかの理由を、案を見せる前に説明するわけですから。男と女に例えると、僕って○○ちゃんと相性ピッタリだと思うんだよねぇ。映画も食べ物の好みも同じだしぃ。いっそつきあっちゃう?ね、つきあっちゃう?みたいな前フリを散々かましてからやっと告白するようなもので、女にしてみたらそんな男はウンザリですよね。

手前みそですが、この説は結構いいとこを突いてると思ってまして。服でもなんでも人は理屈で好きになることはありません。でも逆はあるんです。うわ、これ超好きかも!って思ったところに、店員さんが素材やらデザインやら「もっと好きになる理由」を述べる。そうすると「好きになってもいいんだ」というお墨付きが出たような気がする。やっぱり自分の眼に狂いはなかったんだと誇らしくもある。理屈から好きになることはないけど、理屈がさらに好きにしてくれることはある。つまり理屈はあくまで感情を「補強」する存在なので、プレゼンの順番は「具体案 → 戦略」が正しい。

でもみんな恐いんですよね。自分も含めて。一生懸命考えた案がいきなり否定されるのは誰だってイヤです。だから案の正当性を先に説明することで、やんわりと相手の頭を誘導しようとする。でも相手が聞きたいのは初めから具体的な解決策のみ。ピンと来ないものはいくら理屈を聞いても気に入ることはないんだから、好き嫌いは先にハッキリさせといた方がいい。16年目にしてボクは、その事実に初めて気づくことができました。


学んだこと3. 「8:2」理論で攻略せよ

セレブは自分の話をするのは大好きですが、人の話を聞くことには慣れていません。彼らにとって話とは「聞いてもらう」ものであって、「聞く」ものではないのです。しかし不思議なもので、なんでも自分の思い通りにしたいクセに、それだけじゃなんか物足りなくな〜い?となるのも彼らの大きな特徴です。なぜって彼らはサプライズが大好きだから。そこでオススメしたいのが「8:2理論」です。10の内8割は完璧に彼らのオーダーに応えつつ、残りの2割で彼らの期待を超えるひとヒネリを加える。そうすることで彼らを満足だけでなく、感動させることができるのです。

例えば水が欲しいと言われたとき、水道の水をコップに入れて渡すことは誰でもできる。でもそこでペットボトルの美味しい水にする、よく冷えた氷を入れる、ちょっといいグラスに注ぐ、コースターを敷く、カットレモンを入れるなど、自分なりのひと工夫を加えることで単なる水以上の価値を相手に提供することができる。ボクはそれが「サービス」ということなんじゃないかと思います。

これら3つのルールによってボクは5年間すべての競合に勝ち、売上を守り続けてきました。しかしそこには常にひとつの不満が残りました。クライアントが満足してるのだからビジネス的には正しい。上司にもホメられる。でもボクはどうしても広告の真の顧客である消費者にこそ喜んでもらえるものが作りたかった。その折り合いがどうしてもつかなくなったため「セレブにはもう付き合いきれない」と別れを告げることに決めたのでした。

※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。


佐藤理人(さとうみちひと)
電通 第4CRP局 コピーライター。
マーケティング、営業を経て、2006年より現職。
東京コピーライターズクラブ会員。
受賞歴:TCC新人賞、ACC銅賞など。

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