寄稿 ドロ舟日本の行方


有益でも不快な情報は消えていく

質問 8月上旬の中国の尖閣諸島での挑発的な行動から考えると、日中軍事衝突のリスクを考えなくてはいけない段階になったように思えます。ところが、その時期のテレビのニュースはオリンピック関連のお祭り騒ぎばかりでした。また、熊本地震の後、数百年前に九州から近畿地方につながる大断層帯で連鎖的に大地震が起きたという指摘がありました。これも、その後パッタリと関連報道をみかけません。都合が悪いことは報道させないような検閲のせいなのでしょうか?もしそうなら、近隣諸国のことを独裁国家と批判できないのではないでしょうか?
(21才、学生)



ご存知のことだとは思うが戦前の日本には共産主義や反戦主義に対する厳しい思想弾圧があった。戦後のGHQによる検閲は別の意味でもっと厳しく、個人の手紙や電話なども対象であったようだ。今でも有害図書や教科書検定があるので、全く検閲が無いとはいえないかもしれない。とはいえ、芸能人がテレビで首相の悪口を言っても逮捕される訳ではないから隔世の感がある。
一方、質問者さんが懸念した中国による尖閣諸島軍事侵攻の可能性や、かつて中央構造線に沿って大地震が連動して発生したことに関する報道が極端に少ない理由はもっと単純な理由によるものと推測される。
メディアは「読まれてなんぼ」、「注目されてなんぼ」の営利ビジネスである。これは民放でも実質的な国営テレビ局でも、新聞でもインターネットメディアでも同じだ。そうなると、「人々が聞きたいこと、知りたいこと」は「これでもか」と言うほど報道されるが、「あまり考えたくないこと、聞きたくないこと」は視聴者が不快になるので不人気コンテンツとなる。



また、有識者としてコメントを求められる立場の学者、市場関係者や各メディアの解説担当者、芸能タレントなども、それぞれの立場で発言する。自分の所属組織のことは悪くいえないし、取引先や監督官庁のことにも言及しにくい。番組制作者の立場で考えれば、スポンサーから「あれはちょっと困るんだよね」とか「この時間帯は子供も見ているからふさわしくない」などとクレームが付きそうな話題に対してはどうしても及び腰になる。


見ないようにしていても、そこにリスクはある

「30年以内に首都直下型地震が起こる確率は80%」と分かっていても、自宅に防災グッズや非常食が揃えてあって、家族で緊急連絡方法を確認しあっていて、TVやタンスは壁にしっかり固定、耐震工事も済んでいる、という方はかなり少ないようだ。実際に発生する確率が小さいものの、もし起こった場合に影響が甚大なイベントを「ファットテール・イベント」という。これは確率分布の端のことをテールと呼び、大事件や株価の大暴落が起こる確率は通常考えられる可能性よりも高いことから名づけられたものだ。直下型地震の例では30年で80%とはいっても、30年=約11,000日に1回起こるかどうかだから忘れても大丈夫なような錯覚を覚えてしまう。

「中国が尖閣諸島に攻め込む」ことも、「中央構造線で大地震が起こる」ことも、ありそうなことが分かっていて、その確率は無視できると錯覚しそうだ。だが、もし本当に起こったら日々の日常生活から投資まで極めて大きな影響がありうる典型的な「ファット・テールイベント」である。
実際、メディアの報道は構造的に偏りやすく、それが大問題となるまで警鐘を鳴らすようなものは少ない。この意味において、これに気が付いた点で質問者さんは一歩抜け出した訳だ。ちなみに、気付いただけで終わらせる人もまた多い。何か行動をとるかどうかは、大きな分かれ道なのだ。あとは自分の頭で考えるしかない。

eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)


土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
eワラント証券株式会社
チーフ・オペレーティング・オフィサー
CFA協会認定証券アナリスト(CFA)
(社)証券アナリスト協会検定会員(CMA)

ラジオNIKKEI「ザ・マネー」月曜日のレギュラーコメンテーター。月刊FX攻略、Moneyzine、日刊SPA、ロイターなどに寄稿。著書に『勝ち抜け! サバイバル投資術』(実業之日本社)『eワラント・ポケット株オフィシャルガイド』(翔泳社、共著)など。

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