アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム


実は仲良し。ネットとTV

アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。
※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。


第三回 <実は仲良し。ネットとTV>

「スキップできないTVCMは、Web広告より強制的で逃げ場がないのではないか?」
前回のコラムを読んだ方よりありがたくもそんな質問を頂きました。その場合、古典的な解決法が3つあります。

①チャンネルを変える ②トイレに行く ③お茶やコーヒーを淹れる

PCの前で「5秒後にスキップして動画へ進めます」の一文をにらみ続けている方が、むしろ強制的で「逃げ場がない」気がしませんか?見なくて済む方法がある分、TVの方が自由度は高いのです。最近では4つ目の選択肢として④「インターネットをする」が加わりました。
かつてTVを見ながらすることといえば圧倒的に食事でした。しかし最近の調査(*1)によると「パソコンまたは携帯電話でインターネットをする」人は約70%にのぼりトップ。検索内容はニュース、バラエティ、情報番組に次いで、TVCMがなんと4位に入っています。検索サイトの「急上昇」ワードの多くはTVで流れた内容ですし、ロンドンオリンピックはTwitterとの相乗効果で視聴率を伸ばしました。


テレビ

TV局がYouTube動画の配信計画を発表したり、Twitterと連携したTV実況アプリができたり、近ごろネットとTVは急接近しています。「ネットはTVの敵」なんて時代遅れなことを言う人はもうどこにもいません。TVを見ながら感想をSNSに書き込む。気になる情報を検索する。どちらも偉大なヒマつぶしの道具同士、相性は抜群だったということでしょう。人々は誰に教えられるでもなく双方のいいところを組み合わせて新しいメディアの楽しみ方を創出していたのです。
TVは終わった。これからはネットの時代だ。数年前、そう語る人が僕の周りにも大勢いました。そのたびに僕は「スカパー!」ができた時を思いだしました。制作費に何十億もかけたハリウッド映画や、メジャーリーグやサッカーなど世界のスーパープレイが見放題。似たようなタレントで内容の薄いバラエティばかり流している民放なんて誰も見なくなる。それが大方の論調でした。
しかしフタを開けてみれば、TVを見る人の割合や一日の視聴時間は15年前に比べて微減、またはほぼ横ばい(*2)。今でもみんな地上波を見ているのです。情報が加速度的に増えると何を見ていいか逆にわからないし、その真偽も自分で判断しなければなりません。


結局、仕事で疲れた体には、ビールでも飲みながら気楽に見られるTV番組がちょうどいいのではないでしょうか。私たちは単純でわかりやすい極論に飛びつきがちな生き物です。複雑な世の中をバッサリ両断してくれる言葉は実にもっともらしく、耳触りよく聞こえます。でも現実はそんな単純ではありませんよね。
「TVは終わった」と言う人は、TVが終わると得をするのかもしれない。強い主張は、別の思惑を隠すカモフラージュなのかもしれない。大きな選挙が近づいて、そんなことを思う今日この頃です。

(*1)「スマートフォン利用実態調査2011」(DAC調査)
    「現代テレビ考2009」(スカパーJSAT株式会社)
(*2)「2010年国民生活時間調査」(NHK放送文化研究所)


佐藤理人(さとうみちひと)
電通 第4CRP局 コピーライター。
マーケティング、営業を経て、2006年より現職。
東京コピーライターズクラブ会員。
受賞歴:TCC新人賞、ACC銅賞など。