ドロ舟日本の行方:いよいよバブルに突入?カモにされないように、気を引き締めろ!

質問「年末にコラムを拝見して株式投資を考えたものの半信半疑のまま株価の上昇を横目で見てました。知人から年収の半分儲けたとか、昨年マイホームを買っておいてよかったと話を聞くと物凄く損した気分がします。私はどうすればよいのでしょうか?」(33才、会社員)


ライン

昨年末の衆議院の解散直後に「1ドル100円を超し、日経平均は春には13000円を回復する」と私が言っていたときに、同業者の多くは鼻で笑い、知人との酒の席では「じゃあ、その通りにならなかったら次回はお前のおごりな」とからかわれた。当時も今も、寝ても覚めても相場循環(つまりバブル相場)のことを考えているのが私の仕事であり趣味でもあるので、他の人と見解が違うと私は嬉しくなる。1月のこのコラムでも「バブルで稼ぐことを考えるように」と書いた。

日経平均は13000円では止まらず、既に15000円台へとスピード違反気味の上昇となった。結果論ではあるが、私のアドバイスに従っていた方は新車が買えるぐらいは儲かったはずだ。トヨタもソニーも復活したし、「ドロ舟日本」は安部首相と黒田日銀総裁の応急修理が効いてきた。

こうなってくると「おせっかいオヤジ」の一人としては、数年後のバブル崩壊よりも質問者のような「鍋を背負って味噌とネギを両脇に抱えたカモ」が悪徳商法に騙されないか大変心配である。


投資詐欺の基本は「ポンジースキーム」と「ねずみ講」

バブルが進んで「カネで買えないものは無い」という風潮が広がると、「あなたも簡単にお金持ちになれる」というような宣伝や、「年率8~15%で運用できる」とか「〇〇政府の元本保証」という詐欺が増えてくる。
詐欺の対象は、北海道の原野、金の現物まがい証券、ネット通貨、和牛、日本陸軍の隠し資金、ラブホテル、アフリカやモンゴルの鉱山開発、海外の医療債権まで多岐に亘るし、今後も新手のものが発明されることは間違いないだろう。

といっても、投資詐欺の基本的な仕組みは万国共通のポンジースキームとねずみ講で、単体あるいは組み合わせて使われる。
ポンジースキームとは「お金を集めて懐に入れ、一部をみせかけの配当に充てるもの」。ねずみ講とは「集金システムを無限階層にして、下の階層に新メンバーが加わるたびに上の階層に波及的にお金を分配する仕組み」である。
もちろん、「この商品はポンジーです」とか「当社のシステムはねずみ講です」とはきれいなパンフレットのどこにも書いてはいない。


数十年間、10%複利で運用できるなら投資の天才?

投資詐欺で最も稚拙なものは、ありえないような高利回りを謳う。
例えば「年利15%で30年運用します」といえば、金融関係者がみれば笑い出してしまう。
伝説の投資家といわれるバフェット氏の運営する投資会社バークシャー・ハザウェイ社の株価が1982年末から2012年末までの30年間で173倍になった。
これを年率換算すると17.5%の複利となる。ちなみに同期間のNYダウは年率8.26%、日経平均は涙目の年率0.83%に過ぎない(出所:ロイター、eワラント証券)。


ところが金融知識がある関係者が詐欺商品を作るともうちょっと巧妙になる。
近年発覚したAIJ投資顧問やMRIインターナショナル事件では、通常得られると想定されるものより3-5%程度だけ高い利回りだったり、「元本保証」という見せ掛けの安心を加えたりしてある。
現実には大きなリスクをとらない限り年率10%は無理だし、リスクをとれば30年安定運用や元本保証とは矛盾する。しかし、投資経験が豊富でないカモネギは簡単にこれに騙されてしまうのだ。

もちろん、詐欺の当事者は「成長著しい地域に投資するから大丈夫」とか、「卓越した投資スキルを持った専門家はそこらの凡庸なファンドとは違う」などといってくる
しかし、売買手数料や年間管理費、現地通貨のインフレによる目減りや日本円自体の為替変動(インフレ率が低いので円高傾向)、景気変動の大きさ、割高な新興国通貨の為替コストを勘案すれば、新興国投資ですら年率10%で20-30年運用するのはまず無理といえる(※経済成長が著しかった中国の株価指数である香港H株指数でみても、直近15年でも年率6.6%の上昇で、直近20年だと年率1.4%に過ぎない)。


投資詐欺を避けるためのチェックリスト

投資詐欺に対する最も効果的な対策は、若いうちからeワラントやETFなどで国内外の資産に投資して経験を積み、投資の常識をしっかり身につけることだ。といっても、人生は短か過ぎ、投資だけを考えている訳にはいかないかもしれない。

一方、「世界で一番賢い人間シンドローム」という表現が投資の世界では半ば常識とされている。これは、投資家のほとんどは深層心理では「自分が世界で一番賢い投資家だ」と思っているというものだ。他人のアドバイスを素直に聞くことができる方はそう多くはない。

そこで、そんな多忙な自信家にも役立つようにチェックリストを作ってみた。投資を考える際には、騙される前に活用して欲しい。

◎赤信号の5項目(1つでも危険)
□通常より数%以上高い利回りを保証:こう確約できるのは詐欺師だけ
□リスクがあるのに元本保証:理論的におかしい
□金融詐欺被害からの救済スキーム:騙され易い人は何度も狙われる
□芸能人や政治家が投資セミナーに呼ばれる:投資素人の有名人を呼ぶのはなぜか
□財政破綻やハイパーインフレの危険を煽る:危機の発生確率も考えてみるべき

◎黄信号の5項目(数個該当すると要注意)
□解約可能になるまでの期間が長い:クレームを先延ばしする典型的な手法
□富裕層向けと宣伝:顧客の虚栄心を満足させるため
□投資助言業登録なのに金融商品を販売:法令違反かも
□経営者の写真が怪しい:第六感が正しいことも
□ブログや雑誌でベタほめ:さくら?

(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)


土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
eワラント証券株式会社
チーフ・オペレーティング・オフィサー
CFA協会認定証券アナリスト(CFA)

著書:勝ち抜け!サバイバル投資術バブルで儲け、暴落から身を守る 土居雅紹/著
【内容紹介】 中国バブル崩壊、米国発世界恐慌……ミッションは生き残り。日本と世界のこれから、次のバブルの見つけ方、グローバル経済時代の攻めと守りの最善手を説く。
出版社 :実業之日本社

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