アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム


広告を外注する理由(前編)

アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。


第八回 <広告を外注する理由(前編)>

昔、とあるクライアントに、創立記念日に掲載する予定の新聞15段(1ページのこと)広告のご提案に行ったときのこと。宣伝部長の様子が変なのです。ソワソワして、話もどこか上の空。変だなあ、こないだは「ご提案楽しみにしてます」って言ってくれたのになあ。肝心のキャッチコピー(いちばんおっきな文字)とボディコピー(その下にある長い文章)を読み終えた僕に、彼は気まずそうに切り出しました。


実は…、


出た!予算カットだ!不景気だから仕方ないかあ…。しかしその後に続く言葉は僕の予想を遥かに超えるものでした。

コピー講座に通ったことのある、ウチの社員に書いてもらうことにしたんですよ。


ドヒャー!内製化もここまで来たか…。衝撃を受けながらも、半分はどこか納得し始めている自分がいました。

世の中には大小さまざまなコピー講座があります。簡単なチラシの書き方を学ぶカルチャーセンター的なものもあれば、宣伝会議の講座に代表されるような、TVCMや新聞広告の作り方を半年かけて学ぶものまでいろいろです。

来ている生徒さんは大きく分けて3種類います。就職を控えた学生さん。転職を考えている社会人。そして近年増えてきたのが、企業の広告宣伝担当者の方々です。僕もそうした講座で何度か講師を務めさせて頂いたことがあり、その時聞いた話によると、やはり広告費の削減が主な理由だそうです。でもその背景にあるのは、本当はこんな気持ちなんじゃないかと思います。


コピーなんて誰でも書ける。


デジカメやビデオカメラの性能がいくら上がったとはいえ、商品や食べ物を美しくおいしそうに撮るのは至難の技です。むしろ機械の性能が上がったからこそ、プロとアマチュアの作品には歴然とした差が生まれます。時にはスタジオでセットを組んだり、ロケに行ったりすることもあるでしょう。ポスター1枚作るにも、経験を積んだデザイナーの技術が必要です。ビジュアルの分野にはまだまだプロの腕が求められています。


では、コピーはどうでしょう。皆さんもCMやポスターを見て、こんなんだったら自分でも書けると思ったことがあるのではないでしょうか。言葉なんて誰でも書ける。実は僕もこの仕事をするまでコピーライターという職業を完全にナメてました。もうナメてナメてふやけちゃうくらいナメきっていたと言っても過言ではありません。

超えていく、チカラ。

とか、

あなたのキレイが加速する。

とか、

イノベーションを、もっと。

とか、詩だか文章だかよくわからない物を書いては一端のクリエイター面をする、鼻持ちならないお気楽な人々。そんな印象しかありませんでした。

商品のことはその商品を作った企業の人がいちばんよくわかっているはずです。なんでわざわざ高いお金を払って広告代理店に発注するんだろう?自分たちで作っちゃえばいいのに。その広告代理店に勤めていながら、僕は長年ずーっと疑問でした。だからその宣伝部長の気持ちはものすごくよくわかったのです。

ではなぜ世の企業は、広告制作、特にコピーを代理店など外部に発注するのでしょうか。後編につづく。

※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。


佐藤理人(さとうみちひと)
電通 第4CRP局 コピーライター。
マーケティング、営業を経て、2006年より現職。
東京コピーライターズクラブ会員。
受賞歴:TCC新人賞、ACC銅賞など。