「医者の言うことは聞いておけ」by Dr.ホッピー


葬られたイソジンCM、次は風邪薬?

ンコで流されるビタミンで50億円

父ちゃんの収入が減ったら一般家庭は無駄な支出を減らすのが普通。それは国も同じはずなのじゃろうが、医療についてはやっとこさ重い腰を上げ、無駄な医療選定が始まった。その根底には人口動態がある。ある一定期間の人口変動を指すのだが、2020年頃から毎年100万人単位(政令指定都市一つ分!)の人口が減っていくのだ。振り返ってみると2005年以降は出生数が死亡数を下回っている。誰もがご存じの通り、これからの日本は人口急減と超高齢者化社会へ邁進しておりその対策が急がれている。

医療においては、
・労働者人口の減少による社会保険料の収入の減少
・高齢化による医療費増加
・医療技術の進歩による医療費の増大
などにより、健康保険財源の確保はますます困難となるのだ。今更感は否めないが、いよいよ「無駄な医療は減らすべき方向で」となって来た。


Dr.ホッピー


すでに始まっている動きもいくつかある。
例えばビタミン剤の処方とポピドンヨードのうがい薬(イソジンね)の単独処方。厚労省の食事摂取基準では日本人のビタミンの摂取は足りていることになっているのだから、過剰なビタミン摂取は尿かンコで排泄されてしまい意味がない。摂取しすぎれば過剰症として健康被害をきたすこともある。
そもそもビタミンには、疲労回復、病中病後の滋養回復、眼精疲労・腰痛・肩こりなどの改善機能はないのが医学の常識。つまりCMで謳われている効果など存在しないのだ。保険適応からはずされるのは当然、というか遅すぎるくらいだ。結果、ビタミンだけで年間50億円の削減につながったらしい。

そこでお次のターゲットは“風邪薬”となった。誰もが一度は飲んだことのあるPL(苦みのある白い粉薬)とかのいわゆる総合感冒薬じゃが、これも保険適用から外す方向らしい。おそらく50億円以上の削減になるでしょうな。風邪の諸症状を緩和させる数種の薬剤が配合されている薬で、巷のドラッグストアーの風邪薬と同じで、はなっから風邪を治す薬じゃないんだからわざわざ保険をつかって医者が処方するモンじゃないよね、という考え。うむ、正しい。


風邪薬はドラッグストアで買いなさい

しかし、「単なる風邪でも体力や免疫が落ちて余病に罹ることもあるから、症状の緩和であっても、風邪薬は必要」と反論する人は多い。医者ですらそんなお伽話医療を言う者がいる。お尋ねするがね、風邪ひくと体力や免疫が落ちるって論文があるの?
あったとして、症状緩和薬を飲んでると治りが早いとか余病を予防できたとかの論文はあるの?
ないでしょ?
存在するのは逆に「薬を使っても使わなくても風邪の治療に影響はない」というエビデンスのみ。このエビデンスを国が認めたということじゃ。大進歩じゃよ。しかしな、国はそのことをちゃんと伝えろよ、国民に。


今夜のお食事


さて本題の風邪薬。いずれ「保険では処方できません」で対応することになるだろうが、それまで「風邪は薬で治す」、少しのハナミズでも「余病を起こさぬよう」にと風邪薬を患者に要求されたら、医者は「ドラッグストアーで買いなさい」と言えずに処方しなければならないのだろうか。風邪薬を保険適用から外すこと、多くの国民からは理解されにくいかもしれないが、本来行われるべき正しい考えに基づいたものである、ということを今から伝える必要があるんじゃねーの?
それをオイラはずっと訴え続けてきた。普通の医者よりオイラは恵まれて、健康・疾病に関して国民の正しい知識改革を目指してWeb上で吠え続け、宣伝じゃないが出版までさせてもらった。「一家に一冊、Dr.ホッピー」の想いには遠く及ばないが、故に言おう。あのな、役人と議員。多くの国民はテレビには出てこないオイラみたいなフツーの医者の言う医学的真実よりTVCMのキャッチコピーを信じてしまう、ということなんだよ!

だからTVを使って政府広報のCMとして、お偉い教授にコメンテーターとして出てもらって、「そもそも風邪とは」から「薬を使っても使わなくても風邪の治療に影響はない」、「風邪は万病の元ではありません」などと権威をもって解説してくれ。メディア側へは、飲めば治ると受け止められがちな風邪薬のCMを廃止し、せいぜい症状が軽くなる程度のものであるという内容へ修正いただく。その際に「過去の表現は誤解を招くものでした」と明記もさせる。そんなアクションが必要なんだよ。

ついでに言わせてください。健康食品の「個人の感想です」ってな表記もやめさせるべき。おっと、反論ある方は少なくあるまい。
個人が気分的に良くなるのならそれも有効性としてとらえるべきで、「科学的に云々」を振りかざすものではない、ということかな?
ならば、個人が気分的に改善した感じを得るのにどうしてあんなに高額なの?
老化によってあちらこちらガタがきているジイさんバアさん、健康を取り戻したい一心でなけなしの年金からせっせと注文している話を診察室で聞かされると、科学的に無効で詐欺行為に等しい健康食品のPR「個人の感想です」をやめさせたくなるじゃろが!

「風邪薬を保険適用から外す」、これは大英断と言えよう。このまま風邪薬の処方を続ければ、アナタの老後の医療をひっ迫させ、アナタの子供たちが社会人になった際に払う保険料を増やす負の負担となることが明らかなのだから。早く良くなる♪風邪に効く!と謂う風邪薬のCMは一日も早く廃止させ、医者から風邪薬をもらう文化を抹消せねばなるまい。このようなCMクリエイティブを放置していた日本医師会と厚労省の責任は重い。そして次にやるべきことは「風邪ですね、抗生物質を出しときます」で満足する国民と医者の意識を変えることじゃ。