アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。
かつて賤業と蔑まれた反動か、広告業界には横文字を使いたがる人が非常に多いです。
消費者は「コンシューマー」、商品から得られる利益は「ベネフィット」、表現の土台となる考え方は「コンセプト」といった具合です。ひどい場合になると企画書に、
コンシューマー(消費者)
と書く人さえいる始末。だったら最初から日本語で書けよ!と心の中でツッコむのは僕だけではないはずです。打合せでこの手の単語が出るたび「またか…」とうんざりします。先日もこんなことがありました。
先輩「商品のバリューをどう伝えるかが大事なのよ」
僕 「(そんなの当ったり前じゃん!)その『バリュー』ってなんですか?」
先輩「つまり消費者にとっての『価値』だよね」
僕 「Σ(゚д゚;) ガーン」
お分かり頂けますでしょうか。このときの衝撃。そして会議室に垂れこめた沈黙を。
「和訳かよ!」
そんなツッコミをいれる気力さえ根こそぎ持っていかれるひと言でした。
こういう話になるたびいつも頭に浮かぶ映像があります。それはRPGでキャラクターが城壁の周りをぐるぐる回っているところ。門の鍵が手に入れられず、城の中に入れない姿です。具体案を持たない人は、このようにいつまでも問題の本質に入れないのです。
抽象論で物が売れたら苦労はしません。商品の売りは何か。どう言えばうまく伝わるか。具体案を伴わない議論は無意味です。抽象から具体は決して生まれません。明確なゴールが見えない分、的外れな結論になることもしばしば。小難しい単語を並べて自分に酔っている当人は気持ちいいですが、付き合わされる周りはたまりませんよね。
しかし難しい単語をみんなの前で「それ、どういう意味?」と聞くのは勇気がいります。周りもフムフムとしたり顔で頷いているなら尚更です。そんなとき相手を黙らせながら、「鍵」つまりアイデアを見つけるのに役立つ言葉が2つあります。
「ひと言で」
と
「具体的に」
です。
ひと言で、かつ具体的に説明できないということは、商品の本質を正確に掴んでいない何よりの証拠。もっともらしい横文字を使うと何となく説明できた気がしてしまうため、そこで満足してしまうのかもしれません。
難しいことを難しく説明する人は、本人もよくわかっていない可能性が高い。しかし広告は「難しきことを易しく、易しきことを面白く」伝える仕事。相手がTVの前の消費者だろうと、クライアントだろうと、社内の人間だろうと、その基本に変わりはないのです。
※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。