アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。
「Phubbing(ファビング)」とは「Phone(電話)」+「Snubbing(無視する)」を掛け合わせた造語で「スマホに夢中で目の前の人を無視する行為」のこと。会議中や食事中、電車に乗ってるときなど、誰かといるのに黙々とスマホいじってる人いますよね?アレのことです。会話の途中なのにかかってきた電話やメールに出ることも含まれるそうです。
実はこれ、オーストラリアのMacquarie(マックォーリー)という辞書会社が販促キャンペーンのために生み出した新語。「スマホ依存」のような最新の社会現象を指す語句が載ってることを伝えるゲリラキャンペーンだったはずが、世界共通の現象を指すピッタリの言葉として、図らずも欧米圏で日常的に使われるようになりました。言葉を作るにあたっては辞書編集者をはじめ、音声学者、作家、詩人、弁論大会の優勝者やクロスワードパズルの制作者など、言葉のスペシャリストたちを一堂に集め、議論に議論を重ねたとか。
かく言うボクも「Phubber(ファバー)」でした。しかも重症の。エレベータや信号を待つちょっとした合間や、会議中でも自分とは無関係の話になった瞬間、すぐにスマホに手を伸ばす。大のおとながちっこい画面にかじりついてるなんてイヤだなあ、みっともないなあ。頭ではそう思ってるのにやめられない。別に緊急のメールがあるじゃない。ちょっと気になったことはすぐ調べないと気が済まない。当然歩きスマホもガンガンです。しかしある日、それが原因で恐ろしいことが起きました。
新橋の繁華街をいつものようにスマホを見ながらふらふら歩いてたときのこと。突然目の前に白い物体が現れました。
ドンッ!
白スウェットの上下(胸元には犬の絵)に身を包み、ワニ皮らしき小さなセカンドバッグをブラさげた、身長185cmオーバーのいかにもな紳士のお腹に激突したのです。金に染めた短髪に、限界まで刈り上げたサイドと対照的に伸びた後ろ髪。薄い色のサングラスの奥に埋もれた小さな目に浮かぶのはヤンキー漫画でおなじみの「あ゛!?」というセリフ。その威圧感はまるで「北斗の拳」の「ハート様」もかくや。
マズい!このままでは汚物としてヒャッハー!されてしまう!
超ビビりながらも瞬時に判断したボクは、
「テメェ!どこ見…」
「スミマセン!ごめんなさい!スミマセン!ごめんなさい!」
皆まで言い終わるヒマを与えず直立不動で謝り倒しました。しかも二度も大声で。先手を打たれ、とまどいを隠せないハート様。それでもなお何か言おうと口を開いた瞬間、
「スミマセン!ごめんなさい!」
すかさず三度目をダメ押し。すっかり拍子抜けしたハート様は、
「気をつけろやぁ!おぅ!」
と吐き捨てて去っていきました。ふー、危なかったー。そのあと電車に乗って初めて気づいたのが駅や車内におけるスマホガン見率の高さ。ホームはもちろん、電車に乗るなり全員まずはスマホをチェック。横一列に座る乗客全員が下を向いてスマホに釘付けになっている光景には面白さを通り越して不気味ささえ感じました。
海外では最近「ながらスマホ」の運転防止を訴える公共広告が増えています。昔は「飲酒運転防止」がほとんどでしたが、ガマンのできなさ加減ではスマホの方がお酒より危険。メールが来たらすぐ返信しないと気が済まない。送ったLINEが「既読」なのに返事が来ないとイライラする。それは言わば、待つことに耐えられない「ファストライフ」。スマホは多大な便利さをもたらした反面、人類から辛抱強さを奪ったのかもしれません。「1日10分で痩せる」とか「5つの法則を守るだけで金が儲かる」とか、努力を避けすぐに結果を求める成功本が売れるのもあながち無関係じゃないのかも…。目の前の人より自分の興味関心を優先させる自己中心的な心がどこかで育児放棄にもつながってたりして…。
このままではイカン!いい加減、禁煙ならぬ禁スマしよう!一緒にいる人に失礼だから、せめてPhubbingはやめよう!ボクは固く心に誓いました。その決意はそれからわずか数日後、一人の男の出現によってあっけなく崩れ去りました。野々村竜太郎議員の号泣会見です。あんな面白いニュースがいつでもどこでも見たい時にすぐ見られるなんて、スマホは最高に便利な道具だと思う。
※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。