汗がうっとうしい季節になりました。いい感じにオッサンになってきた我々にとっては汗から派生する臭いも気になるところ。この臭いももちろん化学物質だけど、今回言いたいのは制汗シートに入っている成分について。
制汗シートと言えばお手軽に「スースーする感じ」が得られる便利なもの。この「スースーする感じ」の正体はL-メントールという化学物質だ。L-メントールは毒性もなく、安価で大量に作れるし実はいろんなところに使われている(歯磨き粉とかリップクリームとかガムとか)。鎮痛作用もあるしハッカのにおい成分でもあるのでいろいろ使い勝手が良い。
で、そんなL-メントールがなんで制汗シートに入っているかと言うと、冷感作用があるからなのだ。冷感作用とは「冷たいかも!」という感覚をヒトが得ること、つまり「冷たいと勘違いをする」作用のことだ。L-メントール自体は実際に体温を下げる作用はない。
勘違いと笑っていられない。実際これで体拭いたらヒンヤリしてしまうということは、重要なサインを見逃すことになりかねない。言わずと知れた熱中症である。制汗シートにメインで使われるアルコールはヒンヤリ成分L-メントールと同じく、実は水より体を冷やす効果がない。
例えば、水はアルコールの一種のエタノールより約6倍の気化熱があり、より多くの熱を体から取り除いてくれる。この辺りはお台場の科学未来館のブログが詳しい。サーモグラフィまで使ってわかりやすく説明している。アルコールは固体であるL-メントールを溶かすために使われているのだろう。水ではL-メントールはなかなか溶けてくれないからね。
熱を奪うという意味で考えると水(汗)はかなり優秀だ。すぐに気化(蒸発)しないでとどまっている割には、多くの熱を体から奪ってくれる。汗っていうのは実に効率が良い。だから、制汗シートで汗を抑えるよりも、しっかり汗をかいた方が体にとって本当は良いのだ。制汗シートで体を拭いてヒンヤリしたら、汗も収まるしそれで安心する人も多いだろう。汗を止めなきゃいけないとき、すぐに清涼感を得たいときにL-メントールは実に優秀だ。
でも、「本当に体が冷えたわけじゃないんだ」という正しい知識は持ってほしい。熱中症対策はヒンヤリ成分に頼るのではなく、水分取って汗をかいて熱を飛ばしてもらって欲しい。暑い夏が続くけど、熱中症で死んじゃわないようお気を付け下さい。