全身が青色のニホンアマガエルが8月以降に埼玉県で相次いで見つかっているらしい。普通に過ごしている限りまず見られないこのカエル、幸せを呼ぶ青いカエルなどと言われているそうだ。
アマガエルは周囲の環境によって皮膚の色を変えることはご存じだろう。草むらの中では黄緑色、土の上では茶色という具合に。この色の変化は、アマガエルが持っている3種の色素細胞のバランスを皮膚の中で変化させることで起こっている。しかし、今回話題になっている青色のアマガエルの場合はこの色素細胞の一種が先天的に欠けてしまっており、それゆえ緑色や茶色をとれなくなってしまっているのだ。こういう現象のことを動物学的にはアルビノと呼ぶが、これは何もカエルに限ったことではなく、犬でも、ペンギンでも、実はヒトにだって例があるのだ。
この突然変異カエルだが、その物珍しさと見た目の綺麗さからかとても人気があり、過去のヤフオクではなんと、7万円以上になったこともあるらしい。ちょっとした小遣い稼ぎにはもってこいなのではないか?
なおアルビノは見た目こそ分かりやすいが、色素が欠乏している以外のことは何も変わらない。なので、アルビノのカエルでも普通のカエルを飼うのと同様の環境にしてあげればよいだろう。
しかし悲しいかな、僕のような化学者には「珍しいカエル」と言われると、こいつしか思い浮かばない。
ヤドクガエル(矢毒蛙)である。
ヤドクガエルとは、その名の通り弓矢の先に塗る毒成分としても利用される毒ガエルの一種である。その毒の正体は、バトラトキシンやプミリオトキシンといった数百種類の神経毒が合わさったものである。特に、バトラコキシンという毒は超強力でLD50は0.002mg/kg。これは毒の強さランキングでいうと5位にあたり、サリンやVXといった毒ガスやヒ素やアコニチン(トリカブトの毒)よりも強力だ。そんな毒をヤドクガエルの一種であるフキヤガエルは2mgも持っていると言われる。これは、1匹で体重60kgの大人を16人殺せるくらいの毒の量である。しかも、この毒はヤドクガエルの皮膚から出てくるので、カエルを素手で触るのはもちろんのこと、カエルを拭いたタオルに触っただけで危険なレベルだ。
ただ、日本にはヤドクガエルのような猛毒種はいないのでカエルを見かけても安心してよい。なお、アマガエルの皮膚に毒があると書いてあるWebサイトを数個見つけたのでいろいろ調べてみたが、アマガエルの皮膚にあるとされる化学物質は普通に取り扱う分には問題ない成分ばかりなので心配はないだろう(なめたり、傷口にこすり付けたり、目に入れたりしない限りOK)。なので、興味のある人は存分に青いカエルで一攫千金を狙っていただきたい。
ちなみに、ヤドクガエルも超猛毒とは対照的に見た目がとても美しく、熱帯雨林の宝石と呼ばれている。例えば、前述のフキヤガエルは実に見事な黄色だし、青色のカエルがお好みならばコバルトヤドクガエルという鮮やかな青色のカエルがいる。世の中にはこれらをペットとしている強者もいるらしい。ヤドクガエルの毒は餌からくるものだから、適切な飼育環境なら毒はなくなるという話だ(養殖フグが無毒なのと同じね)。もし色鮮やかなカエルに心を奪われてしまったのなら、手を出してみたらいかがだろうか?