寄稿 ドロ舟日本の行方


アベノミクスで生活は楽になる?

質問「政治には期待していないので総選挙には行きませんでした。ところがいつの間にやら大幅な円安になり、日経平均も1万円を回復したようです。でも、私にとっては楽しみにしていた海外旅行が行きにくくなっただけです。景気がよくなるという話は聞きますが、給料が上がって私の生活は今より楽になるのでしょうか?」(33才、会社員)


ライン

■株価は先行指標、給料アップは最後

株価と給料

株価は極めて有力な先行指標と考えられていて、半年から1年後に実際の景気が追いついてくるのがいつものパターンだ。不況のさなかに株価がスルスルと上げるとそのうち景気がよくなっているし、好景気なのに株価がストンと下げると景気が急激に悪化する。この理由はいくつか考えられるが、もっとも有力なのは「株価は半年程度先の企業の業績を予想して売買されている」というものだろう。

そこで、今回の質問者のように「政治には興味がない」という層は、おそらく景気動向や経済のトレンドにも興味を持たないであろう。そうなると、ただ口を開けて好景気の分け前が給料やボーナスという形で自分のところにくるのを待っているだけになるだろう。実際のところ、給料は景気の遅行指標と考えられていて、企業の業績が良くなり、各社が強気になって採用が増えてようやく給料が上がる。つまり、受動的に分け前を待っている輩が「アゲアゲだぜ!」などと実感できる時はすでに景気はピークを過ぎてしまっているし、長くは続かない。この関係を時系列にまとめるとこんな感じになる。


株価・景気と給料の関係
① 不景気のさなかに株価が上がる
② そのうち企業の業績が良くなってくる
③ 各社が採用を増やし、簡単に転職できるようになる(失業率が下がる)
④ 給料やボーナスが上がる
⑤ 好景気なのに株価が突然下がる
⑥ そのうち景気がだんだん悪くなり、企業の業績が悪化する
⑦ 失業が増え、給料が下がる
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■バブルの正しい使い方

バブル

 景気循環の波の振幅が大きくなったものがバブルと言える。そのピークには一般庶民も給料が上がり、ボーナスが増えてついつい強気になってしまう。こんな時に調子にのって、大きな借金をして不動産を購入したり、サラ金で駆りまくって浪費してしまったりすると、バブル崩壊で痛い目を見る。老若男女・有名無名を問わず、この同じ失敗を繰り返す輩が絶えないから、週刊誌はゴシップ記事のネタに事欠かないというわけだ。


実は、バブルには正しい使い方がある。株価が上がって実体経済が良くなっている間は、起業しやすい。ビジネスは容易に拡大でき、利益も上がる。投資はもっと簡単だ。株やコモディティでも、よほどの曲がり屋(ヘタクソ)でない限り何を買っても儲かるはず。eワラントも上手に使って、まずはここでしっかり儲ける方法を考えよう。ポイントは「ボクの給料はいつ上げてくれるの?」という受動的なアプローチはだめということ。というのは給料が上がるのは景気のピークを過ぎた局面だから。そこまで待っていては遅過ぎるのだ。主体的・能動的に、今すぐに行動しよう。

次に、相場が上がりにくい時期になったら無理せず、欲をかかず、無駄遣いを避けること。投資は手仕舞い、借金は減らし、資産はできるだけ現金にして相場の下落に備えなければならない。特に、株が上がり始めてから数年後には注意が必要だ。投資中級者以上なら日経平均プットやTOPIXのプットを仕込んで大儲けを狙う技もある。なお、株価暴落は10年に一度の大儲けのチャンスでもあるので、それまでに投資の勉強をしておくのも悪くは無い。1990年代初頭の株・不動産バブル、2000年のITバブル、2007年頃までのサブプライムバブルと、いつも同じだった。今回も同じ匂いが漂ってきているようだ。

(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)


土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
eワラント証券株式会社
チーフ・オペレーティング・オフィサー
CFA協会認定証券アナリスト(CFA)

著書:勝ち抜け!サバイバル投資術バブルで儲け、暴落から身を守る 土居雅紹/著
【内容紹介】 中国バブル崩壊、米国発世界恐慌……ミッションは生き残り。日本と世界のこれから、次のバブルの見つけ方、グローバル経済時代の攻めと守りの最善手を説く。
出版社 :実業之日本社