質問「アベノミクスで景気が良くなって来たと言いますが、本当にそうなのでしょうか?夏のボーナスは期待したほどは増えませんでした。将来のことを考えると現在の仕事を続けていて大丈夫なのか不安です。」(25才、会社員)
世の中に確実なことは、あなたも私も毎日確実に年をとっていることぐらいだ。とはいえ、10年後、20年後の状況がほぼ確実なこともある。各国の人口構成である。今年生まれた赤ちゃんの数は分っているので、20年後に成人する人数は各国別の予想値からあまりはずれない。20年後の40歳人口となるとさらに確度が高い。
また、「歴史は繰り返す」ことが多く、景気や株価も7年〜10年程度で循環するので、これに各国経済の発展段階を考慮すれば10年から20年以内に起こる大きな変化が予想できることもある。
転職先を考えるなり、起業する際にはこういった大きな時代の流れを考えてみることが有益だ。そこで、日本経済への影響が大きそうなものを5つ挙げてみよう(但し、職業選択と投資は自己責任で)。
戦前の大恐慌の後、日本はいち早く金本位制をやめて円を切り下げ、日銀引き受けによる軍備増強を含めた大規模な財政支出を実施し、日本経済は急速に立ち直った。
いわゆる「高橋財政」である。アベノミクスがやっていることは基本的に同じなので、今後政策がブレなければ大成功となるはずだ。
しかし、「高橋財政のその後」をみると、将来はそう薔薇色でもない。インフレ懸念から、軍事費を含めた予算引き締めに転じた矢先に2.26事件で高橋蔵相は暗殺され、その後は歯止めが効かなくなった。
ちなみに同様の政策を採ったナチスドイツも経済立て直しに成功したものの、歳出削減を目指した経済復興の立役者(シャハト)は失脚し、その後は日本と同様の展開であった。
一方、教科書では“成功”とされているアメリカのニューディール政策は、実際のところ中途半端な成功に止まり、第二次大戦による特需でようやく本格的な経済回復を成し遂げたとされている。
日本の構造的な問題である人口減少対策に今すぐに手をつけても、その効果が出てくるのは20年から30年も先のこととなる。
アベノミクスは高齢者がドリンク剤をガブガブ飲んでいるようなもの。無理がたたれば体を壊す。根本的な構造改革による日本経済の若返りか外的要因による特需がなければ、インフレ悪化・円暴落を招く可能性が高い。
注意点:これから数年の好景気に浮かれて、無理な借金で不動産投資などに山っ気を出すと後で痛い目を見ることになるだろう。
韓国の出生率は既に日本より低く、中国はもうそろそろ日本の1990年頃のように生産年齢人口(15歳から65歳)がピークとなる。どうあがいても国内需要は減るのだ。日本にようにデフレになるとは限らないが、今までのような高度成長を続ける事はできない。
注意点:「落ちるナイフを拾うな」という投資格言がある。安いと思って中国株、韓国株に飛びつかないように。
中国の自動車保有台数は今年にも1億台になると言われている。
日本は2012年で7600万台程度なので、人口比で考えれば中国が2億台となってもまだまだ保守的な予想といえる。もちろん、他の新興国でも着々と増えているので、2011年時点で全世界で10億台程度と言われていた自動車の台数が15億台となる日はそう遠くはないだろう。その結果、日本への外国からの越境汚染が今後ますますひどくなる。
実は中国だけではなく、インド、韓国や東南アジア諸国でも大気汚染は深刻な状況となっているのだ(下記の動画サイトの中国南部、朝鮮半島、インド、東南アジア各国に注目)。
http://sprintars.riam.kyushu-u.ac.jp/forecastj_movie_casu.html
注意点:日本のどこにいても逃げ場はほとんどない。下記サイトなどでPM2.5や光化学オキシダントに注意し、外出を控えたり、マスクをしたり、高性能の空気清浄機を利用するのが賢明だろう。なお、投資の観点では、関連株の業績は今後も底堅そうだ。
http://soramame.taiki.go.jp/DataMap.php?BlockID=03
中国の軍事予算が実質20兆円程度で日本の4倍もあるといわれている。
これに加えて、アメリカは現在60兆円も費やしている軍事予算から日本の防衛予算に匹敵する5兆円程度減額する見込みだ。アメリカが“世界の警察”としての負担を軽減しつつプレゼンスを維持し、同時に自国の軍事産業を支えるにはどうするか…今まで「タダ乗り」している同盟国の軍事予算を増やして、アメリカから大量に武器を買ってもらえばよいことになる。
中国との領土問題に解決の兆しが見えない中、事態はこの方向に進んでいる。この結果、日本の防衛費はこれから数年で兆円単位で急増することになるだろう。
注意点:防衛関連株を探すなら直接的な発注先だけではなく、付加価値がどこにあるか探すことが必要。アメリカの軍事産業からブラックボックスで高額なシステムを購入している場合もある。
バブル崩壊ほどマーフィーの法則が当てはまるものはない。
中国の各種報道では「中国は各国の歴史を研究しているので上手にソフトランディングできる」と言っている。
しかし日米欧の政府がどこもバブル崩壊を防げなかったのに、中国だけは特別というのは極めて甘い見方といえる。2007年春には「アメリカのサブプライムバブルはソフトランディング」できると大方のエコノミストは予想していたが、やっぱりだめだった。上手く切り抜けたと思っても最後に間違えば、それまでの努力が無駄になる。
加えて、現在の中国当局の姿勢に、「英雄気取りでバブル退治していた日銀」を思い起こさせるものがある。この懸念が現実のものとなれば、良くて日本型の長期低迷、下手をすればソビエト型の体制崩壊となり世界各国に不況を輸出することになるだろう。
中国への依存度が高い企業の業績は悪化し、数百万人単位で日本に中国から難民が押し寄せるかもしれない。
注意点:中国バブル崩壊は大多数にとっては大きな災難であるが、準備をしていれば株式やコモディティ投資のビッグチャンスとなるだろう。
(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)