実際に熱中症で来院する患者はどれくらいいるのか?という話なのじゃが、この数年、しっかりちゃっかり増えております。老若男女年齢問わずで。 何故じゃあ~~?
しかし、暑くて体がダルイ、なんだかフラフラする…って受診するならまだしも、ダルくてノド痛くって…私、熱中症でしょうか? なんてのは、あなたね、暑いときにナニかの症状が出たら熱中症なンですか?! フツーはカゼって考えません?と口から出そうになってしまいます。
また、ワタシはそんな病気にならないから…と思っている人は少なくない。すなわち熱中症という病気への興味は湧いていないわけだ。だから病気を知ろうとしない。それはそれで文句をいうことではない。 しかし医者を含めてメディアも「熱中症に気を付けて」と選挙カーの如く連呼しているわりには、熱中症の症状ってナニ? の問いに、ほとんどの国民は明確に答えられないはず。 答えられなきゃ予防できるワケがないと思いません? だからいつまでも熱中症が減らないんだ。
時間の赴くままに読んでいれば色々な情報を知ることができる“新聞”の読者が減っているそうだ。すなわち興味がないコトであってもそれを知識として持っている人が減っているということ。逆に興味があることはネットを使えば深く知ることができる。残念ながら今はそんな時代。読者減少の煽りで挙句の果てには新聞までが紙面一面のグルコサ…とかヒアル…とかの100%効きもしない“関節技で金儲け”の広告料で会社の生命線を維持している。
古いおつきあいの読者には「またかよ」でしょうがシツコク叫びたい。エアコンで電気の需要が最高のクソ熱い午後に、「節電節電」と騒ぎ散らしておきながら、見る価値もない、くだらない、しかも各局同じゴシップ記事の垂れ流しのの現状。どうせ同じモノを流すならサ、
「本日は全国統一番組をお送りします。同一時刻同一番組で、どのチャンネルも同じ番組でぇす」 「今日のテーマは…熱中症です」 「視聴者の皆様ぁ、ワタシはダイジョウーブ、と思っていませんかぁ? 意外とアナタ、安心できませんかもォ〜〜」 「では、熱中症をお勉強しましょう。ゲストは○×大学救命救急センターのポニョ先生…」 ってな具合でできないものでしょうか?
テレビなくして生きられない日本人じゃけんの、同一番組すりゃぁ国民の半分は嫌でもその番組を見ざるを得なくて、結果、病気を知ることができる。すなわち病気の予防につながる。医療費もかからなくなる。すべて万々歳。どうしてできないの?
スポンサーは製薬メーカー。社訓に“国民の健康の為”って書かれているじゃろ? こういうトコロで社訓どおりにアクションしなくっちゃ。 金、出しましょう!
つまり、メディアも製薬メーカーも厚労省も医師会も学会も、夏が暑いって怠けてんじゃねーぞ!
まず言っておきたいのは、熱中症の特効薬はありません。
では、治療はどうするか? 例えば真夏のゴルフ後のこむら返りは熱中症として良いが、重症度分類では“軽症”である。軽症の治療は“涼しい環境での十分な水分と塩分の経口摂取で良い”である。さて、ポカリの塩分リッチ版で熱中症対策に最適とされ、しかしもう少し安くして欲しいモノに“OS-1”がある。診療所の入り口の自販機に“OS-1”を組み入れて、実際に軽症の熱中症と診断した患者さんに、「外のオーエス、自分で買って待合で飲んで帰って」ってやっている先生もいる。だってオーエスに相当する経口医薬品がないんだから適切な治療方針だわな。医療費もかからないンだから極めて優れた治療法じゃわい。
熱中症のこむら返りがきつくて救急搬送されたとしてもソレは軽症。オーエスで良いのだが救急車呼ぶくらい痛いし、毎日熱中症で何人死亡と流されりゃ「オイラもアブねぇ?」とお思いの人には、オーエス飲んでねだけじゃ「テレビじゃ熱中症で何人も死んでるって言うじゃね~か!オレを殺す気か!ヤブ医者!」と点滴要求必至なわけで、つまりな、医療費高騰を重症化させているのはアンタだちゅうとコトよ。
さて、どんな人が熱中症で重症化しやすいのか?
ジジババ、つまりご高齢の方です。何故、ジジババは重症化しやすいのか。オイラぁ27年医者やっていろんなジジババと出会った。在宅診療もやっておるから“日常でのジジババの思い”も知っている。TVのコメント教授は診察室でのジジババしか知らない。ご老体の日常を知るとどうして熱中症になりやすいか教授もご理解いただけよう。
① 長く生きて来られたんだからこのくらいの暑さにやられるわけがない、と思っている。
実際の気象統計上では昔よりムシ暑くなっていることを知らない。
② エアコンばかりか扇風機の直風は体に悪いと信じ込んでいる。
確かに過去に扇風機で翌朝死んでいた人はいましたが、直接に、かつ持続して体に当てて一晩寝ていた人で低体温症が原因、すなわち扇風機の使い方を誤ったのが原因。 エアコン…微調整できなかった昔は、暑いなと設定を変えると極端に寒くなったりして体が冷えすぎ“冷房病=低体温症”を患ってしまったが原因。 今やエアコンの調節機能は10年も前から秀逸である。
③ 口渇を感じない。
おしっこの色が濃縮する状態(脱水を示す兆候)であっても口渇を自覚できないため、水を飲もうとする気が起きない。つまり、加齢により水分調節という生命維持のための体の反応が鈍くなっている。
④ 暑さを感じない。
真夏のあの午後のジットリとした外気の風を「冷たい」と言ってタオルケットを胸まででかけているご老体がいらっしゃる。
⑤ もともと徐々に枯れている。
医学的な表現をすると、ご高齢の方は細胞外液も細胞内液も“ドライな状態”のバランスが保たれている状態でなんとか平素に生きている。つまりもともと枯れ気味なのだ。元気だったジジババが入院するとムクミが出ちゃって「あゝ、ばっちゃん病気なんだ」と思われるご家族がほとんど。 実は、枯れてバランスが保たれているので、一日2本の点滴(500ml×2)は過剰な水分投与となり、水分が血管外に漏れ出してムクミの原因となる。 逆に、高温多湿環境に居て、元々の“ギリギリのバランス”を脱水させたらどうなるか。容易に体が崩れまくる(最終的には多臓器不全で命を落としてしまう)だろうことは容易に理解できよう。
ということで、「熱中症予防のために、高齢者の特徴を知って熱中症を予防しましょう」とメディアは発信すべきで、逆に毎日、高齢者が「何人死んだ」と発信する。その発信で国民は熱中症は死ぬ病気と認識し、患者さんサイドからの不要の点滴の要求が医療費をつり上げる。
意識・認識・発信の空回りだわな。