先日の酒飲みばなしをさせてくれ。ストレス性胃炎のクスリってあるの?って友人に聞かれたんじゃが、そんなン無いよっと答えたんじゃが、待てよ、一般の方はそういう風に認識しているンか?ってことになってゆるゆる盛り上がったわけよ。内容は以下の通りじゃ。
ストレスが原因で胃が痛い!とはいうものの本当にそんなことが起こるのか?動物実験の結果によれば、マウスに生きるか死ぬかくらいのストレスにさらして(緊縛水浸させるんじゃ。江戸時代の拷問と同じ)、なんとか比較検討できる位の胃炎を作り出すのがやっとなんじゃ。
病態は粘膜のビラン(ササムケた状態)。出血を伴うこともある。
人間様の場合はどうなのか。ストレスがあって胃が…で診療にいらした患者さんに胃カメラやる。で、胃の粘膜に本当にビランがあったとしよう。多くの医者は原因見つけたりィ〜とばかりに「胃が荒れてビランがあります。念のために組織検査しておきますね」でブチっと採取したりする。
医者からの説明は、
・胃にビランがあって胃炎でした。
・組織検査でも悪いモノではありませんでした。
以上の説明。聞いた患者はひとまず安心。
あとは勝手に脳内妄想→前に処方されたクスリが効いて胃の調子も戻ってきたし、ストレスで胃がささむけてが悪くなっていたんだナ。治ってよかった(はぁと)。
こんな具合のシナリオを思い浮かべる人が多いはずだ。アナタ自身、経験されてはいまいか。
ではあの胃のビランは本当に治ったの?ストレスが原因なら日本人固有の病気なのだろうか?そんな風に考えた方はきっと仕事もやりてなのじゃろうな。
だってさ、コチラは「もう一回胃カメラやらしてください」とは言えないし、患者さんからも治ったところを確認してくださいなんて要望したくないじゃろ?
つまり、症状がなくなっても原因扱いされたビランのその後は誰にもわからないままってわけなのだ。
しかしオイラは知っている。昔、薬の治験で投与後の内視鏡で粘膜を観ると残念ながらほとんど変わっていなかった。これが事実。
健康診断で胃カメラやると、ほぼ100%の人に大なり小なりビランが存在するんだ。
いいかい、健康診断だぜ。やられる人は無症状だぜ。つまりもともと多くの人の胃には常時ビランが存在しているっていうコトなんじゃ。
ということは、ストレスで胃が痛いって人がやった胃カメラで明らかにされた“ビラン”は、実はストレスに関係なく以前からあって、それが胃の具合を悪くさせた原因ではないってコトが考えられるわな。
さらに、そのビランが原因っていうならブチッと引きちぎって採取する組織検査。むしろそれによって過剰に症状の悪化を自覚するんじゃね〜の?
つまりな、粘膜がササムケた程度はストレスが引き起こした病的変化ではないってコトだ。それでもストレスだ!とおっしゃる方は、マウスばりの“逆さ緊縛水攻め拷問”クラスのストレスをお持ちだったんでしょうか?
ではストレス性の胃炎ってなんじゃ?
ハッキリ言ってわかりません。なのでストレス性の胃炎に効く胃クスリなどありません。にもかかわらず、ストレスに効く♪を売り言葉にした胃薬は山のようにある。
胃のもたれが胃粘液の減少が原因♪とか言っているクスリも同じで、医学的に全くエビデンスのない広告コピーにすぎない。
おクスリなんてそんなものさと刷り込まれた国民が、「ストレス性の胃炎だと思いますのでクスリください」って滑稽なやり取りが今日も全国の診察室や薬局で展開されるのだ。
じっさいに、 「そんなモンないデス」と言えば、TVCMではストレスで起こりやすい胃の症状に効くって言っているクスリがあるのにどうしてセンセーは処方してくれないんですか?みたいに睨まれる。クソ忙しい外来診療中に今説明した概要をお話することはなかなか難しい。
最先端の考えでは、胃の症状は
①胃酸が関与
②動きの問題
③脳の知覚過敏
この三つが原因となり、単独もしくは複数が複雑に関与して発現するとされている。
だから市販薬の“粘膜を守る”クスリは効果がないと認識されたし。謳われている薬効は明らかに嘘なのである。
製薬メーカーに告ぐ!
いい加減な宣伝文句で誤った認識を植え付けて平気なのか?
しかも国民の健康にかかわることだとわかっているのか?
それを放っておく政治にも問いたい。国民に真の健康意識を持たせることより厚労省と癒着した製薬メーカーの利益が優先ってぇことなんでしょうか。
今回はそんな酒飲みばなしでございます。
楽しかったけど、こうやって文章にすると頭ったまに来るぜ!!