以前に「ストレス性胃炎に効くクスリなどない!」と指南した。今回も同じノリになっちまうかもしれんが、日本全国津々浦々毎日くりかえされているであろう極ありふれた診察室の情景から話を始めよう。
医者:こんにちは。今日はどうされました?
患者:う〜ん、2週間前からカゼで…………。(注1)
医者:どんな症状ですか?
患者:長引く咳カゼなんです。(注2)
医者:おつらいんですね?
患者:いや、咳は1週間くらいで治ってきて、咳出ているころからノドが痛くなって、治りかけに風邪がお腹に来て、今日は下痢が止まらないんです。(注3)
医者:では、今日は下痢でいらしたんですね?
患者:はい。
医者:orz...
ざっとこんな具合ってか? では(注)の医者の「心中の本音」をチラリと覗いてみよう。
注1. カゼで、だけではわからないよ。どこがどのよのような症状なのか言ってよ。例によってカゼひいたからカゼ薬よこせってか?俺たちゃドラッグストアの店員かよ。そもそもカゼって自分で診断しているけど、カゼってどういうモンなのか知っているの?。
注2.やっと言ってくれましたね。はい、わかりました。咳、なんですね。しかも長引いているんですね。でも、カゼって自己診断しないでください。咳を起こすいろんな病気があるのを知っていてのその診断をつけているのではないでしょ?
注3. え、のども痛くなって、治ってきたらお腹にきてぇ・・・? 何じゃそりゃ…。えっ、下痢で来たの? あのね、最初に今日はどうされました?って聞いたでしょ? 最初っから「下痢」ですって言ってよ!
重ね重ね、以上が日本津々浦々毎日繰り返されている診察室の光景。
さて、平常心のまま診察させてもらって「お大事に〜」を言う前に、「ネエネエ、僕らのクスリで鼻から来るカゼのためのクスリとか、冷たい雨にあたってひいたカゼのクスリとかあると思う?」とか「ノド風邪がお腹にきたんだね、って納得できる?」って尋ねるとほとんどの患者さんは「ハイ…」と当たり前でしょ?という目で答える。読者らもそうなんじゃね〜の?
では、一方の“患者さんを診る方"の医者はどういう教育を受けているのか? 世界中で教えられている医療の基本をおおしえしよう。それは・・・、
医療は患者さんの主訴の聴取から始まりそれが診療上最も重要である。
ということだ。
主訴とは、患者が医者に申し立てる最も強い症状のこと。主訴の聴取が最も大事と教育されているンだから医者は最初に主訴を聞きたいのだ。 つまり、今日はどうされましたか? に対して「下痢が…」の流れを医者は要求しているのである。
にもかかわらずニッポンの現状は、経験してきた症状の羅列から患者の訴えが始まる。 う〜ん、さぞ辛かったのかもしれん。 病気と健気に戦ってきた私の努力を聞いて下さいって気持ちもわからんではない。でもな、ラーメン屋で「いらっしゃい、何ンにしましょ?」「餃子っ」「ヘイ、餃子1枚~」「いや餃子欲しかったのはおととい」「昨日から炒飯食べたかったんだけど、今日からワンタンメンが食べたくなったンで、ワンタンメンちょうだい」という流れと全く同じと思いませんか? ソレをアナタ方は日常的にしているんです!
そういう行為(受診の仕方)、誤った思考と行動の根底にあるのは、まさしくCMが原因と断言できる。 「ワタシの風邪は鼻から来る」「ノドから来るかぜには便座」などなど。 このCMが世に出てくる前は、受診時には治っている2~3週間前からの症状をコト細かにお話ししてくる患者さんは少数だったと感じている。 つまり、誤った受診の仕方を教えられているンじゃ。あなた方は!
それからな、世界中の医学書には鼻から来るカゼの項など存在しない。然るに、鼻からくるカゼに〜ってCMみたいな“経過に合わせたクスリ”などオイラ達の医薬界には存在しない。
もういっちょ! 腰痛・肩こり・眼の疲れにアリナミンらしいンですが、アリナミンの成分の"ビタミン“にそれらの改善作用など全くない。ビタミン欠乏症に腰痛・肩こり・眼の疲れはありません! にもかかわらず有効性を謳ってCMを続ける。
エレキバン?10年くらい前に米国の整形外科学会において磁場の血流改善作用が100%否定されてからCMされなくなったよな。しかし全国の薬局では今も売っている。そして肩こりのヒトは買っている。
おいおい、みんな騙されてるぞ~。
そもそも国民の医学知識がメディア発信優先となっていることが問題なんだ。あいつらは面白おかしく番組を作ることが最優先。そしてスポンサー料などなどの金。まぁこれはマスゴミと製薬会社、分かっていながら何も言わない医師会と学会に問題あるから仕方ないけど、それにしても間違った情報が浸透しすぎじゃ。おいらは思うのだ、世間様を欺いてまで金儲けに走るのはいかんと。ましてや医療の分野においては人の命がかかっているのだ。頼むから正しい情報を国民のすべてに伝えてくれい。