ンコが緑色になってしまってびっくりしてネットで調べたら、サルモネラ感染とかいろいろ書かれているんで心配で…って来た患者さん。「センセ、草餅みたいなんですよ!ホントに!」なんて美味しそうなモノが体内から出てきたからか嬉々とされていたんだが、いつもの如く根掘り葉掘り問診していくと原因が網にかかった。草餅色になってきたのは、ナントカっていうヨーグルトを飲み始めてからだそーだ。ナントカを飲むと草餅色になるンですか?って聞かれました。「腸内環境を変えてしまって色が変わる可能性は十分にありますワな」。
そして教えてくれました。「腸内フローラを整えると免疫を高めたり、ダイエット、ガン予防、うつ病にいいんだってって最近はやりで、NHKでもやっていましたよ」と。…腸内フローラ? 医学用語では“腸内細菌叢(そう)”のことだナ。
学生時代、微生物のO教授に教えていただきました。「君らの腸の中は菌だらけなんじゃ。しかもいろんな種類がいてしかし腸内にいなくてはならない菌。病原性菌が侵入しても腸管内で増殖させない環境をつくりだし、局所や全身性の感染症の予防までする。また消化吸収の手助けなどもまかなっておる。彼らを“常在菌”という。人類20万年の歴史そのものじゃ。」
そして某サイトをクリックしてみるとこんな感じでした。「健康な人の腸内には400種を越える、総数で約100兆個もの腸内細菌がバランスよく住みついています。この細菌たちは病原菌などの有害な菌が簡単に体内に入らないよう守ってくれるから必要不可欠の存在なのです。腸内細菌は大きく3種類に分類することができます。善玉、悪玉、日和見の3つ…云々」。そんな腸内の細菌を腸内フローラと呼ぶようになったのじゃな……が、オイラ、疑問に思いました。
腸内にいなくてはならない常在菌を善玉、悪玉に分けていますね。20万年もかけて作られた環境内に悪玉がいるんでしょうか? しかも、悪玉といっても「必要不可欠」で、健康であるならば腹ん中は「バランスはよい」わけですよね。言葉尻をとっているのではありません。虚偽的文章に納得しないだけです。オイラが勉強不足なのでしょうか?
ということで、腸内フローラ。健康志向に乗った単なる商業主義が完全に見え隠れします。
たしかに日進月歩の医学界。腸内細菌の研究も進んで研究者たちが成果を上げているが、研究結果が事実であったとしても、その効果が研究結果どうりに発揮されるかどうか全く検討されていないではないか! つまり自分の商品に都合の良いデータをピックアップし、あたかも有効性が証明されたといわんばかりに引用しているだけではないか?
そして使うのは常套手段の日本人の“英語コンプレックス”。聞いたことがない英語にスッポーンとはまる。しかもフローラって優しい感じィ〜〜ってスッポ~ンだわな。
さて腸内フローラの商品。毎日摂取するってことは、毎日飲んでいないと腸内からいなくなるってコトだろ? 飲んでもいつかは腸内からいなくなっちゃうってことは身体が「いらない」って言っているんじゃないの? しかも居つくこともがきないということなんだから、つまりは常在菌が増殖を抑えているってことなんじゃないの? 「なに飲んでンだよ!オイラ達の環境を変える変な奴らを入れやがって」って。20万年のパワーが発揮されているわけだ。
一方、常在菌はあえて何かしらの方法で補充しなくてもずっと腸内にいてくれる。
例えば場所が異なるが、デーデルライン桿菌。フローラ云々で商品となっている乳酸菌の一種で思春期以降の女性の膣内にいる数種の常在菌である。これらの菌が産生する乳酸によって膣内のpHは酸性に保たれており、このことによって他の病原細菌の侵入増殖を阻害する。すなわちデーデルライン桿菌は、膣の自浄作用を担い、生体バリヤーとしての役割を果たしている。おわかりか? つまり必要ならば補充しなくともよいのだ。20万年かかって完成された機能なんじゃ。
次にメディア。番組作成において第3者的アドバイザーがいない…っていうか実際には居ては困るわな。オイラみたいなヤツがアドバイザーだったら番組を作れないからな。面白おかしく番組を作っているのは、視聴率アップばかりを考えて収入アップをねらう民放ばかりではない。
さて、件の草餅…。ナントカっていうヨーグルトをやめてもらって1週間後に
再診していただきました。温泉饅頭に戻ったそうです。
商業主義のおかげで腸管フローラばかり注目されているが、口腔内フローラ(口腔内常在細菌叢)だって重要だぜ。コチラを整えるのは難しそうじゃが、ぶっ壊すのは簡単。イソジンでウガイすればオッケー。ポピドンヨード…常在菌だろうが病原菌だろうがウイルスだろうがみ〜んな滅菌しちゃうもんね。つまり、カゼの予防にはならないってコト。予防にならないのが事実だからCMできなくなったのだ。でもそれを知らない人たちのためにドラッグストアーでは風邪の予防に、と並んでいる。
同じフローラであっても口腔内フローラをテーマにするとイソジンが売れなくなるので口腔内フローラは話題にできない、いや話題にしてはいけないのだ。
ただ売れれば良いのだ、この国は。