もう少しで実りの秋、食欲の秋! まだまだアウトドアでじゃのゥ。そして腹壊してイテテの下痢ピーでご来院。患者さんに、中まで確実に加熱しましたか?と聞くと「う〜ん…どうだっけ?」とのご回答。とにかく焼けば大丈夫という程度の認識の人がほとんどなのであろうな。実際、ユッケ事件に端を発した生肉の提供禁止以降、焼肉屋においては生肉食による感染性腸炎はほぼゼロになったが“焼いた肉が原因”のソレは変化なしと統計が出ておる。
キャンピロバクタ-、サルモネラ、病原性大腸菌、E型肝炎etc。「生肉を食べてはいけません」なんで緩いものではなく、「アナタが死なないために中まで十分に加熱して食べてください」という表現ができないのだろうか。
そもそもどうして生食いや半生をありがたがるンじゃ?オイラにいわせりゃ衛生概念の欠如した野蛮人だぜ!特にレバーがいけない。レバー=肝臓が危険な臓器であることを解剖学的に解説しよう。肝臓以外の臓器の血管は入る動脈と出る静脈の2本であるコトは皆さんも御存じでしょう。しかし肝臓は、動脈と静脈そして門脈という血管の合計3本が出入りしている。
門脈は肝臓に入る血管で、腸で吸収された栄養分などを“腸の静脈血”として肝臓に運ぶ血管である。運ばれた栄養分は肝臓で体が必要な物質に合成され、そして最終的に肝臓から“出る血管”である肝静脈を経由して大静脈に流れ込む。つまり、腸の静脈血が大静脈に入る中間地点に肝臓が存在するのじゃ。
さて腸内。大腸菌を代表として雑菌だらけ。病原性を持ったヤツだっていて、ソイツらが腸管バリアーを突破して腸の静脈に流れ込む場合は少なくない。肝臓内には紛れ込んだ病原体などを処理する細胞が多数存在し無害無毒化してくれているとはいえ、肝臓は腸内雑菌が紛れてしまっているコトがあるワケで、危険なゾーキっていうか生レバーとか半生ってのはンコを生で食っているのと同じこと。汚ったねぇんだよ!
ところで、下痢〜軟便で転々と医療機関を受診している患者さんがたまにいる。最初は何かのきっけかで下痢が始まっているンだろうが、良くならないからと転々として今回はオイラのところ。お薬手帳を拝見すると過去の先生方が“お好きな整腸剤”を処方されていらっしゃる。薬品名が異なるから患者さんは違う整腸剤と認識しているようだが、現実は五十歩百歩の単なる乳酸菌。先に言った理由を説明して「クスリ止めて、1週間後来てください」で、再診していただくと「治りました」ってなメデタシがほとんど。
しかも医学的に、感染性腸炎で整腸剤を用いると早く治るなどとのエビデンスはなく、先輩医師からの「下痢の患者ぁ?整腸剤でも出しといて」的な代々言い伝え処方。乳酸菌で腸内の酸性環境を作り出し病原菌の増殖を抑え…などと言われているが、じゃぁいなきゃいけない常在菌だって抑えられてしまうンじゃないの? って考えで最近オイラは感染性腸炎の治療ですら乳酸菌整腸薬は使っていない。
で、昨今の健康志向に乗っかって腸内環境だナンだカンだで注目のヨーグルトな。現場の医師としてはっきり言っておくが、こいつの健康被害が増えているのだよ。2~3週間前から軟便(ネバネバ)、頻便、腹鳴、腹満、お腹がなんか変、の症状で受診する患者さん。最初はいろんなコトを考えて問診していたンだけど、ある時ハタと気付いて問診を追加。
「ヨーグルト始めてからじゃないっすか〜?」
実は、症状が出始めた頃に「健康を考えて」「体に良いらしい」からヨーグルト始めているヒトが多いんだよねぇ。しかも飲んでいてお腹の調子が悪くなったから「良くなるために」もう一つ加えて飲んでたりしていた患者さんもいる。ヨーグルトが「カラダに良い」って思い込んでいるから、まさか乳酸菌で「腸内環境を乱されている」と思わないんだよね。
夏場に増殖しやすい“細菌”には、サイキンの注意をしてクダサレ、なんちって。