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寄稿 ドロ舟日本の行方
  • ドロ舟日本の行方 御用学者に騙されるか、自分の頭で考えるか
  • 土居雅紹 (どいまさつぐ)氏

    土居雅紹 (どいまさつぐ)氏

    eワラント証券株式会社
    チーフ・オペレーティング・オフィサー
    CFA協会認定証券アナリスト(CFA)
  • 投資の世界では「投資は自己責任」、最終的に自分を守るのは自分しかいない。
    「え〜そんなの知らなかった。聞いてないし〜」という方は、鴨がネギと味噌を体にくくりつけて鍋を背中に担いで歩いているようなもの。「投資で大儲けしよう」などと考えるとロクなことはない。もちろん、未熟な営業担当のセールストークをこっそり録音しておいて、損をした時だけ「あんた。こう言ってたよね」と損害賠償請求するツワモノにとっては縁遠い言葉だが。

    GW以降、世界の株価は総崩れで、今回も日本株は下がる時だけご丁寧にも一緒に下げている。まあ、世界中のデフレを引き受けてあげる優しい政府と国民だとするなら、それもよかろう。ただ、知らないうちに老人たちの借金を背負わされている40歳以下の世代から、もっと声が上がってもよいのだが、なんとまあ、これもお行儀の良いことか。

  • 「日本は過去20年財政破綻しなかったから大丈夫。ギリシャとは違う」
    「日本の国債は国内で消化されているから、スペインやイタリアのように金利が急騰して困ることは無い」
    「日本の経済規模は大きすぎて、IMFなどではとても救済しきれない。だから破綻などありえない

    と偉い先生方や著名なエコノミストがTVや雑誌で発言しているのを見聞きして、「なあんだ。心配することはないんだ」と思っている方が多いからかもしれない。
    人間の脳は物事の見たい側面しか見ないし、聞きたいことしか聞かない。都合の悪いことは無かったことにして、そうあってほしいと思う情報しか得ないことが、行動に歪みを生じさせる。最近分かったとされてはいるが、なんてことは無い。同じことをローマのガイウス・ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)も言っているのだ。実際、数万年前に洞窟に住んで「うっほうっほ」とマンモス狩に出かけていた頃と脳の作りは大して変わっていないらしい。

  • 過去100年大地震が無かったから」とか「過去30年大事故が無かったから」などは何の足しにもならない。日本がここまで借金を重ねたことも、なんのことはない第二次大戦直後にもあったのだ。その時はハイパーインフレで国民の富をチャラにしてガラガラポンにした。日本の国債は今のところ国内で消化されている。でもそれは郵便貯金経由で知らないうちに買わされていたり、銀行が自己資本規制上有利なので大量に買っているだけで、もとは輸出で稼いだお金を国民がせっせと貯めているお金で国債を買っているのである。では、働く人が少なくなって輸出でお金を稼げなくなったらどうするのか。
    「海外にある資産で稼ぐ?」
    大企業が、海外で稼いだお金をわざわざ投資機会が少なくて税金が高い日本に持ってくると考えるオメデタイ発想ならその理由を教えて欲しいものだ。
    また、日本の経済規模は現在の為替レートで換算したドルベースなら確かに大きい。でも1ドル300円になったら、ドルベースの経済規模は1/4になってしまうということを忘れてはいけない。つまり、通貨が大暴落したら、「経済規模が大きすぎるから世界が何とかしてくれるだろう」などという幻想も一気に吹き飛んでしまう。

  • もちろん、どこぞの偉い先生のいう説明どおりに、「日本は未来永劫、どんなに借金まみれになって経常赤字でも通貨の暴落はなく、ギリシャ・スペイン・イタリアのようにはならない」という説が正しいと思うのはあなたの勝手だ。私も職業倫理に従って、「このままでは大変だ」という考えを述べているに過ぎないから、借金まみれの日本がギリシャのようにならないならそれに越したことは無い。だが、おそらく現在のユーロ危機が解決した後、それを他山の石とすることなく、日本が積みあがった債務をガラガラポンする日がやってくるだろう。

    ちょっと冷静に考えれば、ギリシャが大変なことになっても、結局のところユーロが財政統合するとか、ドイツやフランスが面倒を見てやればよいだけのこと。ユーロ全体で見れば借金の水準は日本に比べればかわいいもので、「だからユーロはだめだ」としたり顔で語る識者の見識は眉唾ものである。

  • 一方でちょっと良いニュースもある。今年の夏から秋にかけていろいろな問題のカタがつき、主要国の選挙の年であった2012年が過ぎれば、来年には世界的な景気が上向く可能性も出てきている。ついでに日本も遅くとも来年夏までには解散総選挙となって、政治の停滞が終わる可能性もある(おそらく可能性だけで終わるが)。となれば、今年の秋から来年にかけて、将来のための軍資金を稼ぐことができるかもしれない。さらに幸いなことに、日本が本当に困ったことになりそうな時期は早くても4-5年先、上手くいけば10年持つかもしれない。その間に、外国人投資家の大人の事情で上昇した日本円で外国株、金やプラチナなどに投資して「その日」に備えたり、自分自身に投資して大不況に負けない価値をつけたりすることもできるだろう。御用学者の言葉を信じるのも、自分の頭で考えるのも自由な選択であり、その結果も自己責任である。

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