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寄稿 ドロ舟日本の行方
  • 他人の経験を学ぶ
  • 質問 投資の勉強を始めたのですが、「もうはまだなり まだはもうなり」とか、「相場は常に正しい」といった漠然としたものばかりで本当に役に立つのでしょうか。どれを知っておくべきか、というものはあるのでしょうか?(38才、会社員)


  • 日本の相場格言には江戸時代の米(先物)相場時代から伝わるもの、戦前のインサイダー取引も、買占めや売り崩しといった相場操縦もありの仕手戦が盛んなころの株式相場、小豆や生糸相場も含めた商品相場から伝わっているものが多い。このため、そのままでは意味がわかり難かったり、抽象的で後講釈に聞こえるものばかりという指摘はあながち外れてはいないだろう。また、この手の投資格言に妙に詳しい証券会社の営業マンや罫線屋ともいわれる株式評論家が必ずしも投資が上手と言うわけではない。文学研究者が売れる小説を書ける訳ではないし、経営コンサルタントがよい経営者になれるとは限らないのと似ている。

    一方、誰が発言したか分かっている名言とされるものは意味するところが明瞭で、いろんな分野に応用が利くことが多い。そこで特に投資に役立つと思われる有名人の言葉を私なりの観点から8つ選んでみた。

  • ①「愚かな人は自らの経験だけからしか学ばない。私は自分が失敗するのを避けるために他人の経験から学んでおくことを好む」
    (オットー・ビスマルク:鉄血宰相といわれたドイツの政治家。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という言葉として日本では知られているが、原文は“Nur ein Idiot glaubt,aus den eigenen Erfahrungen zu lernen. Ich ziehe es vor,aus den Erfahrungen anderer zu lernen,um von vorneherein eigene Fehler zu vermeiden.”でやや異なる。言語的に近い英語にすると”A fool learn only from his experience. I prefer to learn from the experience of others.”)

  • ニュートン
  • ②「天体の動きなら計算できるが、群集の狂気は計算できない。」
    (アイザック・ニュートン:万有引力の法則を発見した大科学者。18世紀初頭のイギリスで発生した南海バブル事件で一時は儲けたものの結局大損した)




    ③投資五箇条
    (1)銘柄は人が奨めるものではなく、自分で勉強して選ぶ
    (2)二年後の経済の変化を自分で予測し大局観を持つ
    (3)株価には妥当な水準がある。値上がり株の深追いは禁物
    (4)株価は最終的に業績で決まる。腕力相場は敬遠する
    (5)不測の事態などリスクはつきものと心得る

    (是川銀蔵:「最後の相場師」とも言われた日本の事業家、投機家。数々の仕手戦で知られる)


    ④「我々が歴史から学ぶべきなのは、人々が歴史から学ばないという事実だ」
    (ウォーレン・バフェット:オマハの賢人と呼ばれるアメリカの経営者、投資家。40年に亘り驚異的な投資成果で世界屈指の富者になった。長期投資で知られ、信望者も多い)


    ⑤「良いアイディアが相場で大きな利益を上げる秘訣ではない。頼りになるのは株価であって、思惑ではない。最も重要なのは、絶好の時が来るまで静かに座っていることだ。私が常に手痛い目にあうのは、自分の判断が正しいと自信を持ってゲームに臨める時にしか相場に入らないという方針を守ることができない時だった。」
    (ジェシー・リバモア:アメリカ稀代の投機家。空売りを得意としたため「グレートベア」と呼ばれた。4回目の破産後に自殺)

  • 米
  • ⑥「米の高下は天性自然の理にて高下するものなれば、極めて上がる下がると定め難きものなり。この道不案内の人は迂闊にこの商いすべからず」
    (本間宗久:江戸時代の米相場で活躍した投機家、相場の神様と言われ、今でも世界中で使われているローソク足を基にした酒田五法を発案)


    ⑦「経済学とは非常に洗練された分野で、過去に取った行動がいかに間違えていたかを説明するのに秀でている。将来については、それほどでもない」
    (ベンジャミン・シャローム・バーナンキ:前FRB議長、世界恐慌の研究家として知られ、2008年秋の世界金融危機発生後の迅速な対応で世界恐慌の再来を防いだ)


    ⑧「市場価格は将来についてのバイアスがかかった見方を表しているという意味で常に間違っていると思う。しかし、歪みは双方向に作用する。市場参加者がバイアスを持っていることだけではなく、彼らのバイアスが出来事の行方に影響を与える事もありうるのだ」
    (ジョージ・ソロス:ポンド危機を引き起こしイングランド銀行を打ち負かした投機家)


    ⑨ I constantly see people rise in life who are not the smartest, sometimes not even the most diligent, but they are learning machines. They go to bed every night a little wiser than they were when they got up and boy does that help, particularly when you have a long run ahead of you.
    (チャーリー・マンガー:バフェット氏とともにバークシャー・ハザウェイ社の驚異的な投資リターンを支えた投資家。バフェット氏の知恵袋と言われる、上記は敢えて原文だけとした)

  • なお、どんなによい名言であっても、どう活かした方がよいかは人による。誰もが大暴落の最中に投資できる胆力がある訳ではないし、無謀な投資をした企業は破綻することのほうが多い。「一升枡(ます)には一升しか入らぬ」と自分の現状を把握し、何が自分に実現可能かと見極めることも時として重要であろう。

    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)

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