- 水に落ちた犬
「国際社会における日本の影響力は以前のようではない」という韓国の李明博大統領の発言は、残念ながら国際社会では常識である。アメリカの大統領候補からは「われわれは日本ではない。10年あるいは1世紀にわたる衰退と苦難に陥っている国にはならない」と言われた。
中国の作家魯迅は「水に落ちた犬は打て」と言い、韓国には「水に落ちた犬は棒で叩け」ということわざがあるらしい。中韓の言動が目に余ると考える諸兄も多いようだが、ともに日本が落ち目だから外国政府も一般大衆もそれなりの扱いをし始めただけのことだ。
日本では「失われた20年」と他人事のように言っている。だが、国策の失敗の結果で「20年を失った(無為に過ごした)」のだけのことだ。赤ん坊がおぎゃあと生まれて成人するまでに20年。つまり現在の成人人口は20年前に既に決まっていたのである。今になって少子高齢化を嘆くなら、20年前に対策を採っていればもう効果が出始めていた頃である。
リーマンショックの後の負けっぷりもひどい。今までのデフレ政策に加えて、米国、ユーロ、中国、韓国などの通貨安競争に日銀が負け、円独歩高を容認して日本国内の製造業の産業基盤は壊滅しつつある。
世界史から学ぶなら、衰退する国や弱小国に隣国は容赦のない態度に出る。無理難題を押し付けられ、国土を蚕食される。往々にして弱い国は政争に明け暮れ、一部が外国勢力と結びついてさらに状況が悪化する。モンゴル人に何世紀にもわたり支配され「タタールのくびき」といわれたロシア、アメリカに広大な国土を奪われたメキシコ、国家がなくなったハワイ、隣国が国土を3分割し消滅したポーランドなど。近いところでもナチスドイツに併合されたオーストリア、中国に併合されている満州・チベット・東トルキスタン、プーチンを怒らせてロシアに攻め込まれたグルジアなど、弱った国は隣国に付け込まれ、つらい歴史を負ってきた。
竹島問題で日本の目を覚ます結果となった韓国は、実は自身がつらく厳しい歴史を背負っている。有史以来ほとんどの時期に、漢・モンゴル、満州など中国北部を治めた民族の属国となっていた(例えば、清との間に結ばれた1637年の三田渡の盟約と土下座碑をググってみるよい。属国とはどういうものかを垣間見ることができるだろう)。しかし、こういったことは韓国の歴史の教科書では(子供に教えるにはあまりに忍びないのか)「無かったこと」になっていて「有史以来の独立国」と教えているらしい。一方、欧米列強のアジア・アフリカの植民地経営に比べて模範的ともされた日本統治の良い面をすべて否定し、「悪いことはすべて日本のせい」という偏向教育が行われている。その歴史観で育った世代がこれからもずっと隣国の指導者である。
その韓国の国力は相対的に上がり、信用格付けも日本と同等か日本より上である。「日本の製造業はもう怖くはないし、頭を下げて技術を吸収する必要はない」と韓国の国民の多くが思う弱体化した日本は「水に落ちた犬」。かの国のことわざに従えば「棒で叩く」のが正しいのである。Aさん「絶対許さん。でも、さてどうしよう?」
Bさん「そんなことどうでもいいよ。自分は戦争に行きたくないし」
Cさん「日本製品を買おう…と思ったけどもう日本製品はあんまり無いんだよね」と個人レベルでの対応はいろいろある。だが、強力なリーダーシップを持った指導者が出現し、廃藩置県・地租改正・財閥解体並みの大変革を行わない限り、「水に落ちた犬」である日本の状況は変わらない。
ではどうするか。まず自分の頭で考えてみることだ。いつも誰かが答えをくれるわけではないし、それが正解でもない。あなたのこれからの20年を失わないために。
(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
eワラント証券株式会社
チーフ・オペレーティング・オフィサー
CFA協会認定証券アナリスト(CFA)
著書:勝ち抜け!サバイバル投資術バブルで儲け、暴落から身を守る
土居雅紹/著
【内容紹介】
中国バブル崩壊、米国発世界恐慌……ミッションは生き残り。日本と世界のこれから、次のバブルの見つけ方、グローバル経済時代の攻めと守りの最善手を説く。
出版社 :実業之日本社
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