- NISAの裏を行くべし
質問「NISA(非課税投資口座)が来年から始まると聞きました。金融機関からのチラシを見るといろいろな早期申込み特典もあるようです。この制度はどう使えばよいのでしょうか?」(42才、自営業)
「キャンペーン期間中に非課税口座を開設して投資を始めましょう!」
「税金がかからないお得な制度です。お手続きはお早めに!」
とタレントから人気漫画まで総動員した宣伝が目に付く。普通の投資家にとっては、今年一杯で終わる株式などの配当・キャピタルゲインの10%時限減税措置の方がよっぽど使い勝手が良かった。
この延長ができないとなって、その代わりの“アメ”として業界がもらったのがイギリスのISAという制度を真似たNISA(ニーサ)である。目的は株式や投資信託などのリスク資産により多くの国民に投資してもらうこと、というと聞こえが良い。
ただ、1回始めると4年間は他の金融機関に移せないとか、期間は5年だけで損が出ても他の株式の売却益と相殺できないといった難点があり、当面は「金融機関のための顧客囲い込み制度」ともいえる。
そうなると、普通に考えれば誰がいくらお金を持っているか把握している銀行が有利そうだが、実際の商品力や取引コストの面では大手オンライン証券が最も競争力がある。
そうなると、ウブな投資家や高齢者は銀行で投資信託の積み立て投資を始め、ネットユーザーはオンライン証券の大手に集まるという結果になるだろう。
- 大衆はNISAでこんな行動を採るはず
いろいろ考えて行動したつもりでも、所詮人間の投資行動は“欲”と“恐怖”で決まる。だから、総じて見ると大衆の選択は似たようなものになる。NISAに関して言えば、以下の3つがあてはまりそうだ。
◎NISA投資期間ギリギリの5年間持ち続ける
投資したものを5年以内に売却できる利用者は稀で、ほとんどの場合5年目一杯保有して損得は時の運にまかせることになるはずだ。
というのも、途中で儲かっていれば「うっしっし〜。まだまだイケルぜい!」と欲が出て売り時を逃し、損が出たら「まだあと〇年あるから、それまでになんとかなるさ。非課税口座で損が出ても使えないし」と思うのが行動心理学から予想される行動パターンだからだ。
◎株主優待銘柄とREITにNISA対象としての人気が集中する
NISAでは期中の配当や分配金も非課税なので、配当利回りが高い銘柄の人気が高まる。また損失が出ると使えないので、下がりにくい銘柄はより好まれるはずだ。さらに、株式投資経験が少ない投資家が個別株を選ぶなら、株主優待が充実した企業の株式が好まれるだろう。
その結果、配当利回りが高いREIT(不動産投資信託)と株主優待として個人投資家に特典が多いハンバーガーチェーンや飲料メーカー、映画館などの個別株の強烈な買い圧力となるはずだ。
◎毎年1月から3月にNISA資金は大挙して買いに動く
毎月投資信託で積み立てるのでなければ、毎年百万円づつ購入可能となった資金で1年もの間じっと好機を待ち続けられる投資家は少ない。まして素人であればなおさらだ。また、どうせなら3月末に確定する配当や株主優待をもらいたいと考えるはず。となれば、毎年1月から3月までの間に買い急ぐことになる。
この結果、「春に高くて夏に崩れ、秋に安い」というハロウィン効果がますます顕著になるだろう。
- NISAの裏に道あり
大衆投資家を抜け出したいなら「人の行く 裏に道あり 花の山」という投資格言を地で行けば良い。つまり、NISAで投資を始める層の半歩先を行き、彼らの群集行動から稼ぐのだ。
この投資法の基本は3つだけ。
「NISA投資家が買う銘柄を絞り込み」、「大挙して買う時期に先んじて買い」、「彼らが買うときには手仕舞う」のである。具体的には、前述のようにREITや株主優待を、秋から年末に買って、彼らが集中的に買う1月〜3月には利喰えば良い。
NISAは現行制度では今後10年続く予定なので、この投資戦略はこれから10年使えそうだ。なお、「私にはNISAで投資する人たちから儲けることなんてとってもできない(>_<)」というガラスの心臓の持ち主は、はっきり言えば「F1からママチャリまで同じレース場で競争する投資の世界には向いていない」。とはいえ、そんな甘ちゃんも「NISAの“正しい”使い方」を学んでおくことぐらいはしておいたほうがよいだろう。
(念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)
土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
eワラント証券株式会社
チーフ・オペレーティング・オフィサー
CFA協会認定証券アナリスト(CFA)
著書:勝ち抜け!サバイバル投資術バブルで儲け、暴落から身を守る
土居雅紹/著
【内容紹介】
中国バブル崩壊、米国発世界恐慌……ミッションは生き残り。日本と世界のこれから、次のバブルの見つけ方、グローバル経済時代の攻めと守りの最善手を説く。
出版社 :実業之日本社
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