11/24 sun

寄稿 ドロ舟日本の行方
  • ボーナスで株式投資、オススメの銘柄は?
  • 質問「アベノミクスのおかげでしょうか。ちょっとだけですがボーナスが出そうです!これを軍資金に株式投資で増やしたいので、オススメの銘柄を教えてください」(25才、会社員)


    株式相場は7-10年程度の景気循環と似たような値動きをする。その観点から言えば、今の相場は7合目から8合目ぐらいまでは来ている感じだ。いつもなら「カモがネギを背負って株式市場に参戦してくる頃」でもある。また、たまたま早めに参戦していたラッキーなビギナーは「オレって投資の天才?」とノリノリでポジションを積みましているはずだ。一方、経験豊富な投資家はこのタイミングで「どこで勝ち抜けしようかな」と考え始めていることだろう。
    そこで質問に対する私のアドバイスはこの3つ。

  • 1.投資を始める前に、他人の頭の中を想像してみる
  • 株式市場や外国為替市場は四六時中相場のことばかり考えているプロやセミプロと、投資を始めたばかりのビギナーがハンディ無しで取引する場所だ。喩えるなら車、バイク、自転車が公道でレースを行っているようなもの。参加者が増えて混んでくれば渋滞が起きたりして自転車が勝てる場合もあるが、距離が長くなれば車やバイクが有利、事故が起きればバイクや自転車はひとたまりも無い。大部分の個人投資家はもちろん自転車の立場で参戦することになる。
    この条件で良い成果を挙げるには、「どのタイミングでゲームに参加するか」、「自動車が大き過ぎて通れないような抜け道は使えるのか」、「道が混んできたらどうするか」、「どの経路なら空いていそうか」、という予想と判断が重要だ。

    だからといって、ヘッジファンドや年金などの行動をすべて知る必要は無い。所詮投資のプロといっても、同じようなニュースを見聞きし、同じようなことを考える人間だ。社会全体の雰囲気が強気なときは前のめりになり、しょぼくれムードの時は弱気に傾き易いし、機関投資家のすべてが百戦錬磨のベテランという訳でもない。つまり、「今、自分が何を考えているか」から想像すればよいのだ。もし、「ボーナスをもらってアベノミクス相場に参戦しておこぼれをもらいたい!」と自分が考えているなら、世の中はそういう輩で溢れている可能性が高そうだ。

  • 2.投資の目的を明確にする
  • 次に、投資に何を求めるのかをしっかりと認識しておく必要がある。良心的な金融アドバイザーなら、「どのぐらい儲けたいのか」、「最悪の場合、どの程度の損なら耐えられるか」、「株式などの投資経験の程度」、「運用予定期間は数年か?それとも数十年か?」、「特定の支出が決まっているお金か?」、「現在の運用資産額」といったことを根掘り葉掘り聞きだしてから、その人にあったアドバイスを行うはずだ。当然ながら1年先に大きな支出が決まっている資金ならリスクの高い運用は勧められないが、10年間寝かしてもよい資金なら「すぐに上がるかどうかは分からないが、5年程度で儲かる可能性が高い」という投資対象も検討できる。

    また、マネー雑誌などでは言及されることは少ないが、「お金と自分の時間を使って稼ぐ」のか「お金に勝手に働いてもらうのか」の違いは相当大きい。例えば、株価指数採用銘柄の入れ替えに伴う歪みや、割安なものを買って割高なものを売る「ロング・ショート戦略」なら相対的にリスクを抑えた投資が可能だが、それに費やす時間も多く、儲けはある意味当然で「費やした労力への対価」という側面も強い。これに対してREITを買ってじっと待つ投資法や半年間だけ株価指数に投資する「ハロウィン戦略」はラクラク投資といえるが、桁外れの大勝は少ない。

    いくら運用するかも決めず、どの程度価格変動リスクを採るか、どの程度の労力を費やすかも定まっていないならかなり問題ありだ。「何でもいいからさ〜。堅いこと言わずに簡単に儲かる銘柄を教えてよ〜」などと考えていると「確実に儲かるいい話があります」とささやく金融詐欺に引っかかることになってしまう。

  • 3.自分の「好みの銘柄」を知る
  • オンライン証券で無料で見ることができるクイックやロイターのニュースは即時性があり、紙ベースの新聞はもはや1-2日遅れの旧聞だ。有料で個別銘柄を推奨するサービスを提供している個人・企業も数多くいるが、“デイトレードが得意”、“数週間程度で大化けを狙う”、“曲がり屋情報”など一長一短、玉石混交である。

    投資に関する情報を取捨選択するには、まず自分の投資戦略、投資期間、1回の目標リターン、損切り水準などを決めておかなければならない。他の投資家には有益でも自分にとっては“猫に小判”ということもありうる。
    今日1%上がる銘柄の情報はデイトレーダー以外には役に立たないし、企業戦略や財務体質を分析するのは数ヶ月から数年単位の個別株投資向きの情報と言える。さらに、数年単位で10銘柄以上に投資するならパフォーマンスは株価指数に近くなるので実は個別株情報の重要性は下がる。
    この場合は各国のマクロ経済分析の方が遥かに役立つはずだ。好みの銘柄や投資スタイルは優劣は無く、あくまで好みだ。これは食べ物や好きなゲームやスポーツのジャンルと通じるものがある。

  • 今回の大相場は経験を積む期間と割り切ることも
  • 投資をしたことがないまま退職金を手にして舞い上がり、高値を掴んで大損…という状況はよく聞く話だ。だから、投資経験を積む事は決して無駄にはならない。また、7年から10年で大相場が来るということは、前回の大底の2008年から考えて2015年から2018年には再び大きく下げる局面が来る可能性が示唆されることになる。
    今回の相場の波は経験を積む期間と割り切って、投資可能資金の一部に限定してeワラントやETFなどのように小額でアクティブに投資できる手段を活用することから始めるのも良策といえる。ここで資金の大部分を温存できれば、次の大暴落時に仕込んでバフェット並みのリターンを得る事も夢ではないはずだ。

    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)
    eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)

寄稿 バックナンバー

一覧へ >

新着記事