12/28 sat

寄稿 ドロ舟日本の行方
  • 30年先
  • 質問「大学に入った時は就職氷河期と言われて将来どうなる事かと心配していましたが、希望の就職先から内定をもらう事ができました。私は幼い頃から運が良く、『何か持っている』といつも周囲から言われてきました。あまりに上手く行き過ぎてちょっと不安な時もあります。これから一年、しっかり勉強するという友人も、思いっきり遊ぶという友人もいます。私は、学生起業をしてみようかなと考えていますが、どう思いますか?(22才、大学生)


  • 新入社員
  • 私が就職活動をしていた1980年代末は、ちょうど日本の株・不動産バブル真っ盛りで、どの企業も新入社員の獲得に必至だった。新卒の大学生を囲い込むために会社の寮に“監禁”したり、海外旅行に連れ出して他の企業を回れないようにしたりするところもあった。当時はどの業種の企業も面接段階から、寿司や焼肉などいろいろと学生においしい食事をご馳走し、面接担当者も人当たりの良さそうな人材を揃えて「ナイスな会社」を演出していた。

    そんな苦労までして採用したのに、数年後には巨大バブルが崩壊。バブル大量採用組は「数は多いけど無能」、「文句だけ多くて自分勝手」などと言われたものだ。半沢直樹が出てくる時代背景である。各企業はその後の10数年、いかにこの世代の社員をトラブル無くクビにするか知恵を凝らすようになった。

    実は好況の時に調子に乗って大量採用し、数年後に人員削減するというのは、日本企業に限らず、欧米の有名企業でもしばしば繰り返される典型的な経営者の判断ミスである。大企業になると管理職の多くはサラリーマンで数年で異動するから、前回の失敗を活かすことができないのかもしれない。

    さらに言えば、就職希望者が殺到する企業・産業は往々にして既に最盛期を迎えていることが多い。戦前なら満州鉄道、古くは石炭、繊維、海運、鉄鋼、80年後半なら電機、銀行・証券・保険、2000年のITバブルの頃ならカタカナ社名のネット企業、今ならオンラインゲーム業界だろうか。とすれば、あなたの就職先が「人気ランキング上位」にあるなら、30年後にどうなっているかは想像に固くない。

    その意味では、入社前に自分で会社を経営してみようという嗅覚はたいしたものだ。
    また、「所詮労働力を切り売りしているだけだから、その対価さえもらえば良い。監視がゆるければできるだけサボろう」と考えるのと「経営者の見方も想像しつつ、将来の自分ためにできるだけ多くのノウハウを学ぼう」とするのでは、仕事の段取りからして大きく違ってくるはずだ。

  • しっかり者の相談者に私ができるアドバイスはあまりなさそうだが、敢えて言うなら30年後の健康に悪影響を与えるリスク要因を減らすことを考えるべきだろう。タバコは極めて依存性(習慣性)が強いので、喫煙者ならこれから1年かけて禁煙道場でもニコチンパッチでも試すと良い。中国からの大気汚染は酷くなる一方なので、タールだけでなくPM2.5と一酸化炭素も多く排出するタバコの害は無視できない。毎日お酒を飲むなら、休肝日が必須。毎日飲めば少量でもアルコール依存症になる。就寝2時間前からはスマホやPCを使わないことも、効果的に睡眠をとるためには重要だ。肥満、ストレス管理など他にもいろいろありそうだが、いくら挙げてもきりが無いので考えるきっかけだけで十分としたい。

    時間の余裕があるなら、1980年頃から米国、中国、日本、欧州に起こった政治経済イベントと為替レート、株価動向を見ておこう。7年から10年で景気循環があり、株価は景気に半年ぐらい先行して「好景気の最中に急落し、不景気の真っ只中に急騰する」ことが分れば、入社後すぐに3年先輩よりも賢い判断ができる即戦力になれるはずだ。

    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)

寄稿 バックナンバー

一覧へ >

新着記事