12/28 sat

寄稿 ドロ舟日本の行方
  • 後出しジャンケン
  • 質問 最近、著名な大学教授の「日本家電業界は製品の細かい仕様にばかり目を向け、儲かるビジネスの仕組みを作らないから衰退した」という記事を目にしました。ということは日本企業の多くはこういった識者のアドバイスをずっと無視して衰退したから自業自得なのでしょうか?それとも、識者の意見は最近変わったのでしょうか?(30才、会社員)


  • リーマンショックの前に、「日本の製造業と雇用を守る!」といって国内の新工場に大型投資をした企業は、地方自治体、国内のメディアや大学の先生方から拍手喝采を浴びた。でもその後の世界同時経済危機による世界的な需要減退と、日銀の金融政策の失敗による円高のために、欧米中韓企業との競争に敗れ、いくつかの有名企業は破綻の憂き目を見た。

    こういった状況に際し“水に落ちた犬をたたく”ように、「製品仕様の無用な変更ばかりしているから」、「過剰品質は世界で求められていない」、「余分な機能がガラパゴス商品の証」、「長期戦略の不在」、「イノベーションの欠如」、「硬直した組織の弊害」など、いわゆる「有識者」たちは弱った日本企業を盛んに批判している。

  • しかし考えてみれば、そういった多くの日本企業は経営コンサルタントのアドバイスに高いお金を支払い、社外取締役に大学の先生方を迎えていた。それでも国際競争の土俵の形が変わるようなマクロ環境の変化に対して無傷で済んだ日本のグローバル企業はほとんどない。「10年前にそうなることが分っていれば、その時に言って欲しかったのに…」と企業関係者の恨み節が聞こえて来そうだ。

    自ら企業を経営する立場にない外野の意見はいつも無責任なものだ。ほんの数年前までは押しなべて「韓国企業を見習え」と言っていた気がする。ところが、アベノミクスで行き過ぎた円高が修正されて韓国企業の経営が悪化すると、過去の韓国企業礼賛は“無かった”かのような雰囲気になっている。

  • 後だしじゃんけん
  • つまり、いわゆる識者の見解はいつも“後出しジャンケン”なのだ。コロコロ意見を変えていることに自ら気が付いていないのか、分っていてやっているのかは判断が付かない。ただ、外からのお気楽批判にかかわらず、企業は時々の経営判断に数年後の浮沈がかかっている。となれば、「日本の人口は減り、東京・名古屋・沖縄以外は困難に直面する」、「日本がいずれ恒常的な経常赤字国になる」、「中国は貧富の差が米国よりも大きく、危機的な状況にある」、「北朝鮮はいずれ崩壊する」、「大気汚染と地球温暖化で自然災害は増える」といった可能性が高い未来予測に基づいて、個人や企業は様々な選択をしていく他はなさそうだ。くれぐれも“識者”のコメントを妄信しないように。いつも“後出しジャンケン”で変わるのだから。

    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)

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