12/27 fri

寄稿 ドロ舟日本の行方
  • リスクジャンキー
  • 質問 今年に入って日経平均が18000円を越えたところで長年塩漬けになっていた投資信託を売却し、1年分のお小遣い程度を稼ぐことができました。でも私が売却した後で株価はさらに上がったので、今ではかなり後悔しています。日経平均は一体いくらまで上がるのでしょうか?また、今から買ってもまだ大大丈夫なのでしょうか?(38才、会社員)


  • 「長期的にはもういいところまで上がってきたように思えるけど、あと1割や2割は上がりそう。数ヶ月の投資と割り切って利益の上乗せを狙うのはありだよね」
    といった“色気”を出して、大多数の投資家が儲けたお金を全部つぎ込んでパンパンにポジションを採る頃が相場の天井となるのが今までのお決まりのパターンだ。実際のところ、質問者さんのような“眠れる一般投資家”が急に元気になるのは相場が8合目から9合目に差し掛かりつつある強力なシグナルでもある。

  • リスクジャンキー
  • 一般的に、株式相場が長期の上昇トレンドに入り、誰もが儲かるようになると個人投資家の多くは“病気”にかかる。それはFX取引などでよく言われるポジポジ病だ。ポジポジ病にかかると、いつもポジションを持っていないといられなくなり、勝ち目が薄い時でも軽率なトレードを行ってしまい、往々にして損失を負う結果となる。

  • 同じ状況を、ちょっときつく聞こえるがリスクジャンキー(中毒)という表現もできる。ポジションを持っているときの興奮を求め、ポジションを持つこと自体が目的となってしまう“病気”だ。パチンコ中毒、競馬中毒、ゲーム中毒と本質的に同じで、大当たりや勝ったときの陶酔感を追い求め、止められなくなるのである。

    悪いことにリスクジャンキーと“自信過剰症”はしばしば併発する。今回の日本株の上昇相場を見ればわかるように、長期トレンドが発生している間は数年に亘って上昇する。個人投資家の大部分は買いポジションなので、大底で買っていなくとも、2合目、3合目、あるいは7合目、8合目で買っても、基本的に誰でも儲かるし、長期上昇トレンド中はずっと期間損益はプラスになる。連戦戦勝が続けば、自分を客観的に見ることができる稀有な方で無い限り、「自分の判断に間違いはない!」と考える。これが極めて危険な状態だ。

    リスクジャンキーと自信過剰症を併発した状況で投資を続けると、お決まりのコースならどんどんレバレッジを効かせて大きなリスクを採る。そして、ある日相場が反落したり、突発的なショックでとんでもない方向に相場が動き出した時に、負けを認めずにズルズルと損失を拡大させ、立ち直れないほどの損失を蒙ってしまう。

  • ここからますます大事になるのは、投資規律
  • 律だ。規律と言っても、「早寝早起き」、「歩きタバコ禁止」、「挨拶は大きな声で」、といったものではなく、「投資戦略を明確に持つ」、「損切り・手仕舞いルールを厳守する」、「途中でルールを変えない」というものだ。これが徹底できなければ、暴落にはあたふた慌て、「今回は違うはずだ」と都合の良い言い訳をして後悔のタネをまき、いろんな投資手法に食い散らかしてどれもまともな検証ができない結果に終わってしまう。「投資規律って何?」というレベルなら、ここから3年キャッシュを抱えて相場を離れていた方が良い結果になることも十分予想される。逆を言えば、きっちりとした投資戦略があれば、おそらくこれから近いうちにやってくる凸凹相場は大きなチャンスになるだろう。

    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)

  • 土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
  • 土居雅紹 (どいまさつぐ)氏

    eワラント証券株式会社

    チーフ・オペレーティング・オフィサー

    CFA協会認定証券アナリスト(CFA)

    (社)証券アナリスト協会検定会員(CMA)



    ラジオNIKKEI「ザ・マネー」月曜日のレギュラーコメンテーター。月刊FX攻略、Moneyzine、日刊SPA、ロイターなどに寄稿。著書に『勝ち抜け! サバイバル投資術』(実業之日本社)『eワラント・ポケット株オフィシャルガイド』(翔泳社、共著)など。

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