12/27 fri

寄稿 ドロ舟日本の行方
  • 耐えてアフリカ?
  • 質問 世界第二の経済大国である中国のバブル崩壊が世界経済に波及して原油価格がさらに下がり、世界全体で長期デフレになると聞きました。僕たちが就職活動を行なう2年後はお先真っ暗なのでしょうか?(20才、大学生)


  • ■「耐えてアフリカ」はもう古い
  • 「カネの北米、〇の南米、伝統のヨーロッパ、歴史のアジア、耐えてアフリカ、何にも無いのがオセアニア」というのが1970年代に世界各国を放浪していたバックパッカーたちの間でしたり顔で語られていた言葉だ。北米で金を稼いで南米に遊びに行き、ヨーロッパでは遺跡や芸術に伝統を感じ、アジアで悠久の歴史を再発見して“にわか哲学者”になるということらしい。「何にも無い」とは豊かな天然資源と高い生活水準のオーストラリアとニュージーランドに失礼な感じもするが、あくまで長期旅行をしているバックパッカーにとっては人口密度が低いオセアニアの大自然は「何にもない」と思えたのだろう。
    そこで、「耐えてアフリカ」だ。風土病、未整備な各種インフラ、地域紛争や内戦、治安の悪さ、慣れない食事など、まあ、耐えなければならない地域も多かっただろう。
    そして、質問者さんが経済の停滞を懸念している中国の1970年代はどうだったかというと、文化大革命と言う破壊と混乱の時代だった。その後、天安門事件などを引き起こしながらも人民服をスーツに替え、人民公社が国営企業となんと上場企業を量産し、共産主義国なのにアメリカよりも貧富の差が激しい経済大国になった。1980年頃に、日本が中国に30年後にGDPで追い抜かれると予見していた日本のビジネスマンや経済学者はほとんどいなかっただろう。

  • ■巨大人口大陸となるアフリカ
  • 図1は国連推計に基づく世界の人口推移だ。2015年時点の74億人弱から2030年には85億人、2060年(私にはおそらく関係ないが質問者さんなら関係はあるはず)には102億人にもなる。その多くはアフリカだ。今中国がブイブイ言わせているのがその巨大な人口を背景にした市場規模というなら、数十年先はアフリカの時代かもしれない。

  • その中国と今伸び盛りのインドと東南アジア、依然として経済・軍事・金融大国であるアメリカとわが日本の人口推移を抜き出して、サブサハラ諸国(北アフリカのアラブ圏を除くアフリカ諸国)と比べたのが図2だ。

  • サブサハラ諸国の人口の伸びに比べれば、人口減少が顕著な中国だけでなく、世界的に“中国の次”とされているインドもちょっと小さく見える。わが日本はだんだん肩身が狭くなる感じだ。もちろん、人口だけで経済大国になれる訳ではないし、中国の開発独裁政策や教育水準の向上、日米による(今となっては中国に甘過ぎた)技術協力と経済支援の影響は大きかった。しかし、世の中は大きく動いているということだ。たった2年先の経済状況を考えて一喜一憂するよりも、もっと先を見て大成功を目指して欲しい。
    なお、投資を考えるのであれば、未だにアフリカは投資インフラが未発達なので、直接投資することは不可能ではないがかなり面倒だ。投資信託やETF(上場投資信託)もあるが、南アフリカやエジプトへの投資が多いので、サブサハラ中心にドンぴしゃりと言うわけでもない。実際、経済の急成長が始まるにはまだ10年かかるかもしれないし、20年後かもしれない。とはいえ、イザそうなったら原油、銅、金、鉄、亜鉛といったコモディティの価格の上昇が10年ほども続いた中国特需の再来となる可能性が高い。チャンスは転がっているということだ。
    (念のため付言すると、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではない。)

  • 土居雅紹 (どいまさつぐ)氏
  • 土居雅紹 (どいまさつぐ)氏

    eワラント証券株式会社

    チーフ・オペレーティング・オフィサー

    CFA協会認定証券アナリスト(CFA)

    (社)証券アナリスト協会検定会員(CMA)



    ラジオNIKKEI「ザ・マネー」月曜日のレギュラーコメンテーター。月刊FX攻略、Moneyzine、日刊SPA、ロイターなどに寄稿。著書に『勝ち抜け! サバイバル投資術』(実業之日本社)『eワラント・ポケット株オフィシャルガイド』(翔泳社、共著)など。

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