- 男は2進法で生きている
アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。
- 第23回 <男は2進法で生きている>
- ① 自慢したがる男たち
すべての男は2種類に分けられる。自慢話の上手いヤツと下手なヤツ。どちらがモテるかは言うまでもない。つまらない自慢しかしない男は嫌われる。どれだけ時代や場所が変わっても変わらない永遠の真理だ。そんなヘタクソな自慢話で溢れかえる場所。それがキャバクラ。一見華やかで楽しそうに見えるが、その実態は会社で誰にも相手にされないオヤジが高い金を払ってわざわざつまらない話を垂れ流しに来てるだけである。
自慢の中身もほぼ2種類に限定される。自分はいかに頭がいいか。またはいかにツイてるか。言い方も2種類しかない。自分で自分をホメるか、他人をケナして相対的に自分を良く見せるか。女の自慢が時代に合わせて巧妙に姿を変えるのに対し、男はいつまでも2進法のまま。「男の話なんて『キャー!スゴ〜い!』とか言ってテキトーに聞き流しときゃいいのよ」と世の女子にバカにされるのはそのせいだ。
しかもそういうヤツに限って話が長い。話し出したら止まらないのも自慢下手の特徴である。相手が退屈してたらどうしよう?と考えるより、自慢したい気持ちが勝ってしまうため最後まで言わなきゃ気が済まない。キャバ嬢の皆さんだって本当はつまらない自慢話なんて聞きたくないと思う。それでもニコニコしてるのはオヤジが高い飲み代を払ってくれるからだ。微笑みはオヤジのドヤ顔ではなく万札の福澤諭吉に向けられている。何が悲しくて新入社員くらいの年の女に、高い金を払ってまで話を聞いてもらわにゃならんのか。男とはつくづく哀れな生き物であり、キャバ嬢は想像以上に過酷な仕事だと思う。
- ② 自慢を上手にする方法
当たり前だが自慢話の好きな人はいない。誰だって宝くじで1億円当たった話より、おろしたての靴でウンコを踏んだ話の方が聞きたいに決まってる。なのになぜ話す側になるとつい自慢してしまうのか。不思議だ。しかし答えはカンタンである。自慢は人間の本能だからだ。スゴいヤツだと思われたい。尊敬されたい。一目置かれたい。ナメられたくない。なのに誰もホメてくれない。だから自分でホメる。しかしそこには漏れなく「自分で自分をホメるヤツほど笑われる」という皮肉な結末が待っている。
ハッキリ言うのはダメ。謙遜しすぎてもイヤミ。ストレートに言うほど遠回りになる。とかく自慢はムズかしい。だからこそ自慢話の上手いヤツが際立つわけだが、どうすれば自慢話が上手くなるのか。人を笑わせるいちばんカンタンな方法が自分を笑うことであるように、不幸を自慢すればいい。自分がいかにモテなくて、ビンボーで、不健康で、口や足が臭くて、仕事で失敗してきたか。不幸な話は人を幸せにする。他人の不幸は蜜の味とはよく言ったもので、貧乏アイドルや子沢山の家族はバラエティ番組で引っ張りだこだし、ワイドショーでも芸能人の結婚はすぐ忘れられても、離婚のニュースはいつまでも追いかけられる。誰も他人の幸せなんて見たくないのだ。会社の健康診断が終わると不健康自慢で盛り上がるのは、自分の方がどれだけ不健康かを競う極めて健全な大人の遊びである。
- ③ 成功は不幸のはじまり
不幸はおいしい。だから不幸な人ほど実は幸せになれる可能性を秘めている。くだらない自慢話で人を退屈させる心配がないし、みんな同情してくれるし、話のネタに事欠かないからどこへ行っても人気者になれる。だいたい成功したってロクなことはないのだ。嘘だと思ったら「B××O」や「△△の隠れ家」的雑誌を見ればいい。「上質を知る」だの「男のこだわり」だの、御託をいくつ並べたところで目的は常に1つ。どうすれば若いオネーチャンをコマせるか。どれだけお金を稼いでも、どれだけ出世しても、やりたいことは十代のときと変わらない。成熟なんて幻想です。むしろ学生時代はTシャツに短パンとファミレスで済んだことが、成功すると高いスーツを着たり、高級車に乗ったり、高級店に行ったりしないとできなくなる。本当に可哀想だと思う。それより仕事もプライベートも全然うまくいかないのにいつも笑ってるヤツの方が精神的に強そうだし、人の痛みがわかる分優しい気がする。白木屋で相談だってしたくなる。少なくとも四六時中Facebookにかじりついて、どこで誰とどんなうまいものを食ったかばかり書いてるヤツより遥かに頼りになりそうじゃないですか。
都知事選よりAKB48総選挙の方が盛り上がる国。戦争してるわけでも、飢餓や疫病に悩まされてるわけでもない。街はキレイで安全で、教育も医療も行き届いてる。銃社会でも階級社会でもない。地震の不安やエネルギー問題や不況など問題は確かに少なくない。それでもまだ日本は世界でも指折りの幸せな国だと思う。少なくとも日本よりもっと悲惨な国はいくらでもある。70億分の1.3億人。その確率わずか2%弱。日本で生まれた時点で私たちは既にものすごくラッキーなのだ。普通に生きて、普通に死ねる。普通ってなんだ?と考える余裕さえある。それだけで十分自慢できることだと思うんですけどね。
※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。
佐藤理人(さとうみちひと)
電通 第4CRP局 コピーライター。
マーケティング、営業を経て、2006年より現職。
東京コピーライターズクラブ会員。
受賞歴:TCC新人賞、ACC銅賞など。
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