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アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム
  • オヤジのセンスがダメな理由
  • アラフォーのヘッポコピーライターが自らの失敗談で綴る、自戒と猛省の広告コラム。

  • 第37回 <オヤジのセンスがダメな理由>
  • 12月24日クリスマスイブの木曜日。

    あと一日頑張れば休みあと一日頑張れば休みあと一日頑張ればあと一日…

  • 朝からそう唱え続けてたら、翌25日の午前4時になってました。去年は掛け値なしにめちゃくちゃ忙しかったです。年明け早々アメリカのクッソ寒い荒野に撮影に行ったらクルマのドアに指を挟まれて骨にヒビが入ったり、痔と痔瘻のダブル手術後にナプキンしながら血まみれのお尻で国民的大スターにプレゼンしたら痛みで声が裏返って笑われたり、後輩がメジャー仕事をバンバンやって有名になっていくのを指をくわえて見てたり、大腿四頭筋炎になって病院の待合室で半日悶絶したり、歯医者に行ったら口の中がひどい状態で多額の治療費が飛んでったり、最後の3ヶ月間は編集作業で毎晩コンビニ弁当だったり、公私共々ボロボロなのにそれを感じる暇もないほどあっという間でした。そんな時の早さを痛感しまくった一年でしたが、中でもトドメの一撃となったのが、

    えー、窪田正孝っていう今キテる俳優がいましてですね…

    と後輩に説明されたときです。とうとうこの日が来たか…。人気タレント、チャート上位のヒット曲、流行のファッション、最先端のデジタル機器など「今どきの話題」について何も聞いてないのに説明されるようになったら、もうどこへ出しても恥ずかしくない立派な中年の出来上がりです。思えば今から十数年前、自分も打合せで40代のおじさんたちに「最近『レイヴ』というテクノやハウスのフェスが流行ってまして…」と説明したっけなぁ…。自分もついにあの人たちと同い年になったかと思うと感慨深いものがあります。

    ちなみに(もちろん)窪田正孝は知っています。しかしだからといって「バカにすんじゃねー!窪田正孝くらい知ってんだよ!こっちはデスノもdヒッツのCMもちゃんと見てるし、『十三人の刺客』のときから注目してんだよ!」とムキになるのは実に大人げないことです。かつて仕事をしたCD(クリエイティブディレクター。部長みたいなもんです)にN女史(40代後半、♀)という人がいました。彼女は当時、ちょっとしたヒット商品だったIT機器の担当にも関わらず、プレゼンでクライアントに、

    ギガとメガってどっちが大きいんですか?

    と無邪気に聞いてMr.フリーズばりに空気を一瞬で凍らせたり、CD-Rを触りながら、

    これ、どこからデータを入れるのかしら?

    と質問して新入社員を悶絶昇天させたり、タレント選定の打合せで、

    ミポリン(注:中山美穂)とかどう?

    と発言して会議室を丸ごとバブルへGO!させたりする女傑でありました。彼女の恐ろしさは自分のセンスが「今どき」であると心の底から信じて疑わないところにあります。自分以外の全員が知ってても自分が知らなければそれは「ぜんぜんマイナー」だし、みんなとっくに飽きてても自分さえハマってれば「世の中でキテる」ものになる。しかも人一倍頑固でアンケートの数字など客観的データを見せてもなかなか納得してくれない。中年にして早くも老害の殿堂入りを果たしていたのです。

  • センスが劣化しない人なんていません。感覚のバックボーンとなる生まれ育った時代に差がある以上、どんなに必死で流行を追いかけても若者の方が必然的に「今」なことは間違いない。いくら趣味が悪かろうと大多数が支持すればそれが「流行」になるわけで、そこでムキになって対抗しても端から勝ち目はないのです。N女史との2年間(長っ!)で、僕は若者と付き合う上でもっとも大事なことを学びました。それは、

    新しいことを教えてもらう勇気

    です。常に旬であり続けることを求められる広告業界において、第一線で活躍し続けている40代以上の人は全員、若者を活用するスキルが抜群に高いです。案を採用するかどうかはともかく、才能ある若者をどんどんチームに加えて常にアイデアの新陳代謝をはかりながら、ベテラン世代のケツに火をつけ続けるのです。

    今から5000年前のエジプトの遺跡には「最近の若者はなってない、わしの若い頃は…」という文章が象形文字で刻まれているのは有名な話。ただでさえ人は自分より若い世代を下に見がちなもの。でも音楽だろうがグルメだろうが、年をくってる分、上の世代の方が多くを知っていて当たり前。大事なのは古いものも新しいものも全部ひっくるめて、

    興味を進化させ続ける

    ということ。それはすなわち「新旧にかかわらずいいものはいい」というフェアな視点。ミーハーにいろんなジャンルに手を出すもよし、ひとつのジャンルを極め続けるもよし。常により良いものを求め続ける意欲こそ発想を若々しく保ってくれる。方法は実に簡単。

    キミはどう思う???

    このひと言さえあれば若者とのコミュニケーションは完璧です。もちろんその答えは完璧ではありません。未熟さが目について、つい「わかってない」だの「ものを知らない」だのと思うこともあるでしょう。しかしそこをじっとこらえて、否定も批判もせずとりあえず耳を傾ける。「どうせロクでもないに違いない」と偏見を持たず、意見を求めてみる。自分の中からは逆立ちしても到底出てこない意見がひとつでも見つかれば大成功。アイデアがグッと今どきになること間違いなしです。逆に言えば、今どきのものさえロクに知らない若者はもう救いようがないってことでもありますが。

    ※ 本コラムの内容は全て個人的な発言であり、所属する組織や団体とは一切関係ありません。むしろ早く関係して発言できる身分になりたいものです。

  • 佐藤理人(さとうみちひと)

    電通 第4CRP局 コピーライター。

    マーケティング、営業を経て、2006年より現職。

    東京コピーライターズクラブ会員。

    受賞歴:TCC新人賞、ACC銅賞など。

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